263人が本棚に入れています
本棚に追加
食事が終わり、食後のお茶ーーセイロンティーのようなお茶だった。を飲んでいると、「あの〜」と声をかけられる。
「お二人は、どんな関係なんですか?」
甘ったるい声に沙彩が視線を向けると、声をかけてきたのは、先程まで壁際にいた食堂の女性達だった。
「ん〜。そうだね。友人かな?」
マリスが答えると、女性達の目の色が変わったのがわかった。
女性達はマリスを取り囲むと、次々に質問を繰り返したのだった。
「お兄さん、その制服は騎士団の方ですよね? 恋人はいないんですか〜?」
「お兄さんのようなカッコイイ人が、独り身なわけがないですよね〜?」
「恋人はいないよ。今はまだ、ね」
苦笑しているマリスの言葉に、女性達は黄色い悲鳴を上げる。
そんなマリスと女性達を眺めながら、沙彩は食後のお茶を堪能する。
(やっぱり……)
食堂に来た時からそんな気はしていた。やはり、彼女達はマリスを狙っていたのだ。
マリスを自分のものにしようと画策しているのだろう。
(だから、睨まれていたのね)
食堂に来た時から、女性にちょいちょい睨まれていたが、やはりマリスと一緒にいるのが気に入らなかったらしい。
マリスもはっきりと断わればいいものをと、沙彩がウンザリしてため息を吐いた時だった。
それを耳ざとく聞いた女性の一人が、マリスの腕にしがみついた。
「ねぇねぇ。こんな娘よりも、私達と遊びましょうよ」
肩に手をかけてくる女性達に困惑しつつも、マリスは「ごめんね」と女性達の腕を振りほどこうとする。
「俺にはサーヤを守る役目があるからね。君たちの相手は出来ないんだ」
「え〜。そんな〜」
「あの、こむす……あの子がそんなに大切なの?」
女性達に睨まれて、目を逸らしている沙彩に気づいているのかいないのか、マリスは「ああ」と返す。
「俺にとって、サーヤは特別なんだ。かけがえのない大切な存在でね」
向けられたエメラルド色の瞳にドギマギしていると、女性の一人が沙彩に向かってきた。
「貴方、騎士様とどういう関係なの?」
「どういう関係と言われても……」
どう答えたらいいのかと、沙彩がオドオドしていると、その態度が相手の神経を逆なでしたようだった。
「何も言えないの? じゃあ、何ともないのね」
「それは……」
沙彩が言いかけた時だった。沙彩に詰め寄っていた女性の肘が、丁度、沙彩の近くを歩いていた給仕の女性に当たった。
トレーにジョッキのようなコップを持っていた給仕の女性は、バランスを崩して沙彩に向かって飲み物をこぼしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!