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諦め
うまく眠れなかった。
Tシャツがぐっしょりと濡れている。昨日はひどくうなされたらしい。食欲はないが、それでも何か食べないと体がもたない。僕は冷蔵庫から野菜ジュースを取り出すと乱暴に口へ流し込んだ。裸足でペタペタとフローリングを歩き、トーストを焼く。味気ない。
棚から缶詰を一つ取り出した。サバの水煮。味気ない。
テーブルにおかれたのは、トーストとサバの水煮。とても朝ごはんとは言えないが、今はこれしか無かった。僕は気を紛らわすためにテレビをつけた。
「速報です。公衆トイレに女性の遺体が遺棄された事件です。」
僕は静かにニュースを見続けた。犯人はまだ見つかってないんだ。
僕はトーストをかじった。何か塗る物でもあればよかった。サバの水煮など食べる気になれなかったが、一口食べた。飲み込むのにかなりの時間がかかったが、それでもなんとか食べた。はあ、僕はどうすればいいんだ。
ピンポーン。ドアのチャイムだ。まだ朝なのに。僕はゆっくりと立ち上がると玄関へ向かった。
「青柳さんですね。」
ドアに立っていたのはスーツ姿の二人の男性だった。一人は60代くらい。もう一人は30代くらいかな。
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