秘密な関係

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秘密な関係

俺は誰かと争うなんて面倒くさくて嫌いだから兎に角、楽な方へと逃げていたんだと思う――――――――。 少し開けた窓から温い風が入ってくる昼休みの保健室。鍵を掛けられて二人だけの空間。 白いベッドに座り込んで窓の外を眺めていると、間仕切りカーテンを閉められ、外の景色が一瞬にして遮断され、白い布地へと変わる。 女が何も言わずに当たり前のように隣に座っては上目遣いで見つめてきた。 「ねぇ、(とおる)。今日、終わるまで待っててくれる?」 少し身体を反らせて見る景色には黒い瞳に人工的なものであろう睫毛が長くカールしては赤い口紅の女の顔がある。 白衣を着て、膝上の短いスカート。 お手入れが行き届いているのか健康的な肌の色の長い脚を組んでは、胸元を強調させるようなざっくりと空いた洋服。その隙間から見える、黒いレースの下着を見せつけては誘惑しようとしているのがみえみえだ。 保健室の教員、西田亜希子(にしだあきこ)。 30代後半から40代の教師が多い中唯一27歳と若いだけに校内の男子が密かに想いを寄せている人も少なくはない。 若い大人の保健教師というだけで思春期の男子、男性教員でさえ鼻の下が伸びるくらいの存在だった。 塩谷亨(しおや とおる)もその一人·····と言いたいところだが、差ほどその設定に興味はない。 そう言っておきながらも西田と恋人同士の関係であった。 表面上はあくまで教師と生徒。 「嫌だ。第一お前終わるの遅いじゃん。待ってらんない。」 亨は西田の気配を避けるように立ち上がったが手首を掴まれては引き止められる。 交際を迫ってきたのはあくまで教員にも拘らず西田の方からだった。 『亨くんはカッコいいし、周りの男子より大人っぽいわ。』などと言われ、大して好きではなかったが成り行きで付き合った。
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