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今までの恋人も好きって言われて付き合って、一方的に押し付けてくる愛に適当に応える。
そして「亨が私のこと本当に好きなのかわかんない」って言われて別れるのがオチ。
だからって特にショックでもなかったし、
強く引き止めて縋ることもしなかった。
映画とか架空の物語では恋愛をするとよく周りが見えなくなる程夢中になると言われているが、亨はそうは思わなかった。
所詮空想の世界、現実なんて相手の粗を見つけて嫌になっては、別れるのがオチなのは目に見えているので、本気で好きになるものでもないと思ってた。
恋愛なんてこんなもん。過度に期待を寄せるものでもない。
「ひどーい。恋人を待ってるくらいしなさいよ。まあ、そんな冷たい亨が好きだけど」
西田がキスを迫ってきて、何のためらいもなく唇を重ねた。
流れるままに西田を押し倒そうとしたとき、保健室のドアが叩かれる。
「はい終了。今日はここまで」
物欲しそうに見つめてくる西田から離れ、ベッドを降りようとしたとき腕を掴まれる。
「えーいいよ。亨、続けて」
下から胸元がざっくり開いた服から除く胸の谷間を見せつけられても正直続ける気はしないし、雰囲気に流されて押し倒そうとしたが、そこまでしたいとは思わなかった。
「いい大人が何言ってんだよ。怪しまれたらお互い困るだろ?俺授業あるし、じゃあな。」
「もう、真面目ぶっちゃって」
不満げな表情をしている西田を残したまま足早に保健室を去る。
保健から出ると1人の男子生徒が立っていた。
自分と同じくらいの背丈だが全体的に細くて、制服で男だと分かるが顔は中性的という方が合ってる。
失礼ではあるが貧弱で保健室に通っていると言われても違和感はなかった。
そんな男を横目にしながら通り過ぎては背後から西田の「あらー」と言う先程とは違うあからさまな教師の声音に静かに鼻で笑うと、亨は自教室のある上階へと登る階段へと向かった。
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