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星野がいない以上、教室に一人でいる意味もなく。だからと言って他のクラスの輪の中に混ざるのも出来ないことはないが、ノリや波長を合わせるのは怠い。
輪に入ったところで星野はまだいい方で、他のやつは興味本位で俺と西田のことを容赦なしに聞いてくるのは何となく判りきっていた。
西田のことなんて星野以外に話していないし、星野だってああ見えても口は固い方だ。だけど、噂は噂を呼ぶように2年の中では俺と西田が付き合っていることは広まっているようだった。
保健室に行くことも考えたが、行ったら行ったで昨夜、既読無視をしたので西田を宥めるのもそれはそれで面倒くさい。
ふと、昨夜朧気に会いに行こうかなんて考えていた人物の顔が浮かんで亨は、即座に座席を立ち上がると教室を出てひとつ上の階へと階段を登っていった。
いつか見た保健室の名簿に3年C組と書かれていたのを思い出しながら、廊下を歩く。
昨日、連絡を寄越さなかったことを小突いたら葵はどんな反応をするだろうか。そんなことを考えていると、進める足が自然と早くなる。
そもそも教室にいるか分からないけど·····。
教室手前まで来たとき、前方の出入口から
見覚えのある背中を見つけた。
しかし、いつも以上に暗い雰囲気を醸し出していて両手に何かを抱えながら階段の方へと向かっていく。
葵の後ろ姿を眺めていると教室から笑い声が廊下まで響いてきて、中を小窓から覗く。
金髪の男とその取り巻きが机に座りながら大声で笑い合っていたが、周りの生徒は、ひそひそとしながら何やら教室中の空気が重たそうだった。
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