125人が本棚に入れています
本棚に追加
嫌な胸騒ぎがして、状況を見ているのも億劫だった亨は教室から目を離す。直ぐに声を掛けようと思ったが、彼の頼りなく丸まった背中になかなか声をかけることができず、静かに追いかけることにした。
階段を降りて、校舎外に出ると学校のゴミ庫まで辿り着き、小さな箱をゴミ箱にひっくり返していた。箱をひっくり返してはパラパラとゴミ箱内へと捨てられていく中身。
ひっくり返しているのは弁当箱だと遠目から見ていても分かる。
自ら持ってきた弁当をゴミに捨てるはずはない。さっきの目の当たりにした金髪の笑い声を思い出しては、彼に何があったかはだいたいは予想はできていた。
「葵?なにしてんの?」
「と、亨くん。えっと·····」
葵の背中にゆっくりと近づいて声を掛けると、葵は慌てた様子でゴミ箱の蓋を閉め、振り返っては弁当箱を後ろに隠した。
目を泳がせて言葉を詰まらせているのが明らかに動揺してる。
隠したって一部始終全部見てたんだよなー……。かと言って本人が隠したがっているのを安易に突っ込んでいいのものかと思い直す。
こういう時第三者はどうしたらいいのか分からない……。
「昼一緒に食べない?」
丁度昼ご飯はまだだったし、今の自分に出来るのはこれくらいが精一杯だった。
葵は目を逸らして首を振ると、「もう食べて終わってしまったので……」と言ってきたが、直後に自分のものでは無いお腹の虫が泣き出し、一瞬にして赤面させていた。
亨は意地らしく嘘をつく葵を見ていられずに、細い手首を力強く掴むと強引に引っ張っていった。校舎の中に入り、売店の目の前に葵を待たせては適当に複数のパンと飲み物を買う。
生徒が集まる売店前の離れた隅で何処か落ち着かないのか、俯きながら突っ立っていた葵の手を再び強引に引き、何か言いたげにしている彼を無視して一目散に保健室へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!