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西田は嫉妬深いし、自分のことを優先してくれないから、俺に関わろうとしているものにいちゃもんをつけているだけなのではないかと疑う。
「何、俺が葵先輩に目移りしてるとでも言いたいの?」
西田は大きく首を振っては肯定した。
葵以前に西田にすら特別好きという感情を抱いたことのない俺が誰かに恋愛感情を抱くわけがない。葵先輩といたら落ち着くし、会いたいだとか、からかったら面白いだとか思うけど……それは単なる好奇心。兎を見て触れ合いたいと思う感情と一緒な気がする。
「ねぇ亨、私のこと本当に愛してるの?」
右手首を掴まれ、見上げくる西田の瞳は微かに潤んでいた。明らかに自分と西田の恋愛に対する熱量が違う。なんで皆「愛してる」だとか「好き」だとかに固執するんだろうか。好きになって相手の言動に一喜一憂したり、些細なことでも嫉妬し丸出しで、相手を縛り付けようとするのだろうか。熱を含ませた瞳の西田を見下ろしながら、亨の心は冷めていた。
「じゃなきゃ付き合ってないと思うけど」
だからと言って正直に全てを話せば地雷を踏むことは分かりきっていたことなので、あくまで西田のことを肯定する。
「じゃあ。葵くんともう関わるのはやめて」
「なんで?葵先輩と関係ないじゃん、そもそもただの知り合いだし」
西田の不安を取り除くために葵と関わらないことを提案されて、胸の奥の何かがフツフツと沸騰するかのように体温が上昇する。
「知り合いなら尚更よ。どっちにしたってあの子いじめられてるじゃない。あの子に構ってると亨まで虐められるわよ?」
「別に俺が誰と仲良くてもお前に関係なくね?」
「関係ないわけないじゃない。虐められっ子が彼氏なんて私嫌よ」
まるで自分が西田のアクセサリーのような言い草に、西田に対して腹が立っているのだと気がついた。自分が関わる人間まで西田の言う通りにしないといけないのだろうか。
そんなのおかしい……。
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