保健室と葵

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葵がいじめを受けてようが、自分が葵と関わりたいと思ったことの何がいけない…?保身の為に自分の意志まで押し殺して見て見ぬふりをして遠ざけるようなことは、俺の事を救世主とまで言ってくれた葵の笑顔を思い出したら、しようとは思えなかった。 「お前そういうの気にすんの」 感情が昂りそうになるのを拳を強く握ることで堪える。 「気にするも何も亨の為よ」 「俺の為ねぇー」 俺の為と言っておきながら、自分の為なのは先程の発言から見え見えだった。俺の心配なんて微塵もしてないくせに、ついでの様な言葉。葵との決別を羨望するような眼差しと掴まれる手首の圧。 「心配しなくても、大丈夫だよ。俺、そんな弱くねーし」 西田の頭を優しく撫でては慰めてやる。 感情的になるのは、らしくないし、この場をどうにか切り抜けたかった亨にとって下手に西田を刺激をしない為にはこうするのが得策だった。 葵の頭に衝動的に触りたいと思った時と違う表面上だけの行動に、第三者のように冷静な心で見ていた。触れているのはずなのに西田に対して心が擽られるような感情など浮かばない。 しかし、その行動は彼女の怒りを収めたのか少しばかり大人しくなったが「でも……」と言いながら西田は弱気な返事を見せたことで、 何か言いたげな唇に誤魔化すようにキスを落とすと完全に空気を変えた。 主導権を得た亨は、そのまま西田をベッドに押し倒す。 西田を抱きながら抱くのは疑問ばかりで、 縛り付けてくる恋人、機嫌を伺うように適当に相手に応えて、ただの流れの様に肌を重ねてこの関係に何の意味があるのだろうか……。 自分は何をしているんだろう。 こんな恋愛、なにが楽しいんだろうか。 何のためにこんな気怠いことをしている·····? それよりも葵と話す時間の方が胸が騒いで楽しくて亨にとっては有意義のように感じていた。
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