告白

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西田に構ったことで必要以上に執着してくることは無くなったが、西田に不信感や疑問を抱きながらもまた同じようなことが起こっても面倒で義理でメッセージが来たら返すことはしていた。 その一方で葵からの連絡は未だに来ることはない。亨はどうでもいい相手からは連絡が来るのに、待っている相手からは来ない現状にヤキモキしていた。 教室に行ってもタイミングが悪いのか居ないことが多くて、だからと行って保健室まで行くのは西田に会いたくないだけに足は向かなかった。 「しおやー女ってわかんねぇよー」 紙パックのジュースを飲みながら窓の外を眺める亨の向かいの座席で星野が机に突っ伏して泣きついてくる昼休み。 ここ数日、彼女の佐和田と昼休みはお決まりでお弁当デートをしていた星野だが、今日はどうやら断られたらしい。 佐和田のお弁当に期待していた星野は相当ショックだったのか、売店で購入したパンを貪りながら先程からずっとこんな状態だった。 「あーそう」 「相変わらずの反応だなー。何があったとか聞いてくんねーの?」 「何がとか。飯断られたくらいで凹むなよ。彼女にも予定があんだろ」 突っ伏した顔を上げて、「違う!」と勢いよく此方を見てくる星野の瞳は微かに涙を浮かばせていたので、昼の誘いに断られた以外の何かあったことには間違いはなかった。 「そうじゃないんだよ。それだけじゃなくてさー……俺、彼女変化に気づいてやれなかったんだよ」 「はぁ?」 「彼女髪切ったらしくてさ、全く気づかなかったわけ。それまでは良かったんだけど、どうって聞かれてさ、「変わらないよ」って答えたらそっから彼女冷たいんだよー」 「あーあ」 よくありガチの話に亨は深く納得した。 彼女が美容室へ行って髪切ったのを彼氏は気づいてくれるかで喧嘩になるカップル。 そう珍しくもないし、大概そういうのは時間が経てばほとぼりが冷めてくるので、星野の大袈裟な落ち込み具合いに少し心配したことを後悔した。 「いや、言い訳させてくれよ。ほんの2、3cm切っただけらしいんだぜ?気づくも何も変わらなくね?」 確かに佐和田は肩までの長さのロングヘアーだし、指の第一関節程度の長さに切ったくらいでパッと見ただけでは、気づかない。 ただ問題があったのは星野のその後の返しだ。
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