僕の転機

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彼に会えたのは夢だったんじゃないかと思うほど江藤らとの毎日は変わらず繰り返される。 そんな中でも、せめて彼の姿だけ見に行こうと思えても、彼の同級生に話し掛けられてしまった以上、教室に行くのは躊躇われた。 変な噂が立ちストーカーだと煙たがられるようなことは避けたい。ましてや下級生だし、上級生が来ていたら余計に目立つような気がして行動には移せなかった。 一層のことあの日彼に会えた出来事は、一時の夢だと片付けてしまった方が楽な気がしたり。 今日も江藤に階段の踊り場で足をつっかけられてしまい、床への盛大に転んだ。 顔にかすり傷を負い、放課後に手当しようと保健室に足を運んでは、西田先生に椅子に座るように促されると、救急箱を受け取る。 葵が立て掛けの鏡を見ながら自分で手当をしようとしたところで、西田先生は「先生ちょっとでるから、葵くん何かあったら呼んでね」と言い残して保健室を出て行ってしまった。 暫くして扉が開かれると先生に連れられて、入ってきた人物に心臓が止まりそうになるほど驚いた。もう二度と会えないと思っていた彼がそこにいた。 彼の姿を目にするなり、一気に体温が上昇する。何度見ても自分と正反対で堂々としていて、格好良くて直視が出来ない……。 西田先生が再び保健室を出て行って、2人きりになってから余計に葵の緊張は増していた。 あれだけ欲しいと思っていた彼と話すチャンス……。 これを逃したらもう一生現れないような気がして、意を決して話し掛けると、彼は優しく答えてくれた。塩谷亨(しおやとおる)、教室に覗きに言った時点で分っていたが2年A組の1つ年下。 会話を交わしているうちにお花の話になり、つい我を忘れて話してしまったが、塩谷くんは嫌な顔せずに聞いてくれていた。 その後も自分が江藤とのことで沈んでいる時に必ず現れる自分にとって救世主の男。 亨への好意は益々膨らんでいった。 勿論、1度ならず2度までも助けてもらって御礼をしないわけにはいかなかったのは当然だが、一度彼と言葉を交わした日から御礼を口実に亨ともっと話をしてみたかった。 緊張と恥ずかしさを乗り越え下校途中の亨を引き止め約束をつけれたことに嬉しく思う。 葵が花以外でこんなにも積極的になれるのは初めてだった。
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