126人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく窓の外を眺めていると、先程の三人組が男に並んで近寄ってきていた。
男達に背を向けて花壇の前でしゃがんでいる地味な男は勿論気がついていない。
すると金髪が男の背後まで近づくと右足を上げては後ろから男の背中を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされて花壇に倒れ込む男。
男が態勢を整えて立ち上がろうとしたとき、赤茶髪の男が付近にあった蛇口を全開にしてはホースの水をかけて男が立ち上がるのを妨害していた。
頭から被る水を懸命に顏を腕で覆って避けようとする男を見て笑いあっている奴ら。
見ていて見苦しい光景だ。こんなのは暇人のやることにすぎない。
亨は窓の外を覗くのを止めると階段を下りて行った。
校舎内を出ると男を苛めていた奴らが陽気に笑いながら校門を出ていく姿がみえる。
飽きて止めたか教師にバレたか。
奴らの様子からすると前者っぽいが……。
亨は苛められていた男が気になりはしていたが、自ら花壇の方へ向かおうとは考えていなかった。
何処の誰かも分からない奴に手を貸す気などないし、今更出て行ったところですでに遅い。
こんなのは教師に任せておけばいい。
なんて考えながら閘門に向かって歩こうとした時、腕に誰かがぶつかる。
左腕に冷たさと湿っぽさを感じて振り返ってみると花壇の男が水滴を地面に落としながら、俯きがちに校内へと入っていこうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!