僕の転機

7/7

124人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
当然、そんなつもりで葵と付き合っている訳ではない江藤はクラスメイトの前で反発し、関係を否定するかように葵を虐め、揶揄うようになった。 別に江藤が悪いだとか責める気はないし、これは仕方のないことと割り切ることしか出来ない。この関係は卒業まで変わることは出来ないだろうと諦めていた。 「なあ、大藪。俺が代わりに送ってやるよ。こいつに好きですって」 江藤が侮蔑するような眼差しで悪い笑みを含ませながらスマホの画面を見せてきた。 そこには『亨くんの事が好きです』の文字が打たれている。 根元が「やば、凌介最高。こんなの送ったら折角できたお友達もドン引きだわ」と高笑いをしている横で葵は顔が真っ青になるくらい焦っていた。 根元の手の中で必死に足掻くが、江藤の親指が躊躇いもなく送信をタップする。 暫くして「送信しました」と現れた画面に絶望した。 こんなの送られたら、今度こそ終わりだ……。 亨くんはきっとそんな気持ちで付き合ってくれているわけじゃない……。 こんな想いを向けられて不快に思うに決まってる……。 葵は戦力を無くしたように深く項垂れると皮肉るように「今度はうまくいくといいな」と江藤から嘲笑う声が聞こえては、机上にスマホを投げつけられると教室を出ていった。 初めて彼に連絡をするのが告白だなんて笑えない……。別に亨くんとどうなりたいとかじゃない、こんな自分にでも話を聞いて、構ってくれる人がいるんだと嬉しくなっただけ。 でも、邪な気持ちを抱いている自分には友達になることでさえ許されていないのだろうか……。 葵は即座に電源を落とすと、彼の返事が怖くてその日の放課後までスマホに触れることはなかった。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加