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告白の真意
ピラミッド型になったロープ遊具に昇り降りをしながらはしゃぐ子供たちや学校帰りであろう小学生達がランドセルを遊具の隅に放り投げて鬼ごっこをしている。そんな午後の公園のベンチで葵と並んで座るが、葵から伝わる張り詰めたような空気に自分の心も伝染した。
葵は膝の上の拳を強く握り、俯いている。
こういう時は急かすように葵の言葉を催促するんじゃなくて葵が切り出すまでじっと待っていた方がいいような気がして、亨も相手に合わせるように黙りをした。
暫くして、漸く話す決心がついたのか握った拳に力を込めては「先程は·····逃げるようなことをしてしまって、すみませんでした·····」
と座位のまま深く叩頭し、上げた表情は今にも涙が伝いそうなほど歪ませていた。
「メールで·····と·····亨くんに嫌われたんじゃないかと思って怖かったんです」
嫌うどころか、誰かに好きだと告げられてこんなに高揚する感覚は初めてだった。
そしてそれが、葵で、葵に自分は好かれているかもしれないのだと分かると嬉しくて、いてもたってもいられなかった。
「俺はそんなことで葵のことを嫌いにはならない·····」
固定概念に縛られて、自分の評価とか周りの目ばかりを気にして相手にも強要して生きている奴より、花のことが、純粋に好きで好きな物の話になると普段の大人しい印象から想像出来ないほど饒舌になり、ブレない葵の方が亨には魅力的に見えていた。
「ありがとうございます·····でもすみません·····あのメール送ったの僕じゃないんです·····」
葵が話しにくそうにそう告げてきたとき、胸をギュッと掴まれたような感覚を覚えては、焦燥感に駆られた。葵だからそんなことはないと確信に近いものを感じていただけに、嘘だったと知った時の衝撃が大きい。
あのメールを葵が送ったのではなかったとしたら·····誰かに無理やり送らされたのか·····?
あの本文は葵本人の気持ちではないのだろうか·····。
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