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「あのっ……だからって僕、亨くんと付き合いたいとか恋人になりたいだとかじゃないんです.......ただ.......亨くんさえ良ければ……い、今まで通りお友達でいてくれませんか.......。こんな僕じゃ嫌かもしれませんが.......」
亨が黙っていることを返事に困惑していると諭したのか、葵は時折言葉を詰まらせながらも微かに身体を震わせ、そう提案してくる。
告白したのならその先の、付き合いたいだとか望みはある筈なのに友達でいいなどと控えめなことを言ってくる男に酷く胸が締め付けられた。
「葵といるのは嫌じゃないよ。だけど、ちゃんと返事はさせてくれないかな……?」
ちゃんと気持ちに整理をつけてから葵とのこと真剣に考えたい。そう思えたのは初めてだった。
「はい……。構いません……僕は亨くんとこうやってお話できるだけで充分なので……」
亨の返事を聞いて安心したのか、葵は肩を下ろし一息つくと優しく微笑んでいた。雰囲気から今のこの状況に嬉々としていることが分かる。それが見ていて嬉しくて、葵と付き合えたら楽しんだろうかと考えてしまっている自分がいた。
西田との関係を終わらせて、この葵への衝動的な気持ちが恋なのだと確信に変わるまでは大切に芽吹き始めた小さな蕾を育てていようと思った。
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