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思っていたことと真逆の行動を起こしている自分に驚いたが、そんなことよりこの男をどうしても放っておく気にはなれなかった。
保健室まで強引に連れてきてはノックもせずに「西田いるかー?」とドアを開けたが中には誰もいないようだった。
職員会議でも行ったか……?なんて思いながらも適当にワゴンに入っていった白い無地のバスタオルを男に手渡す。
亨は「そこで待っとけ 」と男が何か言いたげにしていたのを無視して保健室から飛び出すと、歩きずらいスリッパで階段を段飛ばしで駆け上がりながら自教室へと向かった。
教室後方のロッカーから自分の全く使っていないジャージの上下を取り出すと、再び階段を降りては保健室へと戻ってくる。
中では男が制服の上着を脱いで頭からバスタオルを被り、気怠げに髪の毛を拭いていた。
男にゆっくり近づくと、気配を感じたのか
タオルを被りながら深く俯く。
濡れたシャツが張り付いていてよく分かる、男の薄っぺらい身体。
「これ着て帰れよ。俺、あんま使ってないし 」
男の目の前に先程、取りに行ったジャージを差し出す。すると男は顔を上げ、目を丸くしてこちらを見ては、直ぐに伏し目がちになってしまった。
「いいです。あなたに迷惑をかけてしまいますし……」
両手を握っては頑なに受け取らないという意志を見せる。
それに男はこの状況が落ち着かないのか、全く亨と目を合わせず、目を泳がせてはどこか居心地が悪そうだった。
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