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返ってきたジャージと花好き
「ねえ、来週の今日は何の日でしょう?」
真向いの席から熱い視線を浴びているのが分かる。
一瞬だけ目をやると西田が頬杖をつきながらこちらを見てきていた。
亨は向けた視線をすぐさま逸らすと然程興味のない手元の雑誌に目線を落とす。
何の変哲のない保健室で過ごす昼休み。
「亨。聞いてる?」
答えは分かっていたが口を開くのが
億劫で無言のままでいた。
「ねえ、ってば!!」
「お前の誕生日だろ 」
ねえとしつこい西田が鬱陶しくて強く言い放つ。
答えたら答えたで鬱陶しさが増すことには変わりないが言わずに癇癪を立てられるよりはマシだった。
案の定、西田は嬉しそうに「ピンポーン」言っては亨の右手を手に取り頬に押し当てては擦りつけてくる。
「とおる。空けといてね?プレゼント期待してるから」
西田の得意な猫なで声と上目遣いで強請ってくるのを見て可愛いなど微塵も思わない。
寧ろいい年こいて何やってんだ。
「面倒くさい」
西田の頬から逃げるように右手を引っ張ると
簡単にすり抜けた。
当の本人は、そんな冷たい亨の態度が面白くないのか、亨が目を通していた雑誌を取り上げてくる。
「またまたー。ブランドのバックなり、少しは年上に尽くしなさいよ」
典型的な構ってちゃんの西田はこうなると面倒くさい。
「プレゼントとか無理。体でならいくらでも尽くしてやるけど」
亨はアルバイトを掛け持ちしているとはいえ、一人暮らしだし、アルバイト代なんて生活費を引けば雀の涙ほどにしかならない。
西田が強請っているブランドバックなんて買えるわけないし、そこまでして西田に尽くしたいとは思えなかった。
「亨のスケベ。まあ、今はまだそれでもいいけどね。亨といれるだけで充分よ」
しかし、構ってやったことで西田の気持ちは満たされたのか、西田は右手を放して身を乗り出すと頭を撫でててきた。
そのままキスをせがまれた所でドアがノックする音が聞こえる。
西田は「もう、誰よ。」と不満気に呟いては文句を言いながら扉を開けていた。
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