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オレは小さなため息を吐いて、あきらめて立ち上がった。
見ると、居間の狭いテーブルの上はオレたちが飲み食いした残骸で埋め尽くされていた。
宴の後片付けをして、ほぼ屍のコイツをどうにか動かさないと。
キッチンへと向かう前に今一度、見下ろす。
「うぅーん、水まだぁー?」
呻くだけならまだしも、アノ形の良い尻を無造作にボリボリと掻いたりする。
いくら自分のモノだからってひどすぎる。
オレは揉むどころか、触ることすらためらったというのに――。
まるでナマケモノだな。と何の脈略もなく不意に思い付く。
コイツは会社ではバリバリとまではいかないが、それなりにテキパキ仕事をする方だった。
今はこんなんだけど。
――だから、女性社員にも人気があった。
持ってきた水が入ったコップを左頬へと当てた。
「気持ちいー」
「ホラ、起きろ。飲め」
「うーん」
素直に起き上がったことはおきあがったのだが、よりにもよってコイツときたらオレへと抱きついてきた!
「――オマエ、マッサージ上手過ぎ。思わず寝落ちしちゃったじゃん」
コップの中の水が零れないようにと、空いている左手も動かせないオレに一方的にもたれ掛かってくる。
木にぶら下がるナマケモノをオレは思い浮かべた――。
終
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