廃村とロケット

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「やだぁまだ死にたくないよ……ぐす」  全員が一目散にその場から逃げようとするが、ハルキが急に立ち止まる 「ちょっと待ってください、本当に幽霊ですか?」  ショウタは焦りながら 「何言ってんだよ、早く行くぞっ!」  とハルキの腕を引っ張る。今度はスズが息を切らしながら 「でも、言われてみれば幽霊ってこんなはっきりと見える?」  これに全員が覚悟して立ち止まり追いかけてくる方に目を向ける。  すると、近づいてきたのはなんと紛れもない人間だった。小学生ほどの女の子と父親のようだ。  この後、父親の話によりあらゆることが明らかにされた。 ーーどうやら彼らは隠れキリシタンの末裔で、世間には知られていない小規模集落で独自の信仰を続け、原始的な生活をしているという。  このことを知る者は麓の村の一部の人間だけで、廃村は大昔に隠れキリシタンが焼き討ちにあった場所で殉教地とされているそうだ。  例の土砂崩れ当時、父親たちは兆候を感じ廃村の方へ避難する途中だったらしい。そこで娘がミチルを見つけ、父親は避難を勧めようか考えたが自分たちの存在を知られることに躊躇い、声をかけられなかったという。  その後土砂崩れが起きるとミチルたちの身を案じた父親は翌日に現場に行った。すると押し流された車の中で数人が既に死んでいたそうだ。そして放り出される形で倒れていたミチルは意識こそ失っていたが、息をしていた。  そこで助けようとするが、集落には入れることができないうえ寺院や民家までは距離がある。やむを得ず昼時に地元民の車が往来の増える道まで担いで運んだそうだ。  ロケットはその後娘が拾ってきたらしい。見れば押し花と写真が入っていてすぐに分かったという。娘は、それを助かっていればまた来るかもしれないと大事に保管していたそうだ。
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