6人が本棚に入れています
本棚に追加
廃村とロケット
初夏を思わせる香りが周囲を漂い、梅雨らしい湿度が辺りを包み込む昼下がり。雑然とした小部屋で超常現象を追うサークルの活動が今日も行われていた。
「うぁっついよぉ。この時期に30度ってさぁ……これこそ超常現象じゃんっ」
もうすぐ床に滑り落ちるほどだらりと椅子に身を預けているのは北河アリス。
「超常現象とは説明出来得る事象には使えない言葉ですよ、アリスさん」
と向かいでパソコンに向かい合うのは新藤ハルキ。アリスは座り直すと机に突っ伏し
「いいのっ、アリスにとってはもうこれがね。超超常現象なんだよ。
むぅ、机もあったかい……自動で冷える机とかないのかなぁ」
スライム化したアリスの横で漫画を読むボーイッシュは石動エミル。
エミルは一笑し
「ねこ型ロボットでもそんなもん持ってないだろうな。てかそんなもんあったら電気代やばいだろ、冬どうすんだよ」
「冬は温かくなればいいんだよ。そうすればさぁ、こやってるだけで快適でしょ」
「その度に机に突っ伏すとか。それこそ怪奇現象、ってかある意味ホラーだわ」
スライム状態のアリスはむくりと起き上がるとエミルに近寄っていく。
「おいっ、何やってんだよ近づくな暑い」
「えへへ、紛らわそうと思ってぇ……」
そう言うと不意にエミルをくすぐり始める。
「ちょっあはは、や、やめっ……やだ」
「おぉ、どれどれここかぁ?」
「あっははっやだ、やめ……やめっ」
そして部屋にパンッ! と高い音が鳴り響く。エミルが手に持つ漫画でアリスの頭を思いきり叩いたのだ。
「やめろっつってんだろ……!」
と息絶え絶えに叫ぶ横でアリスは
「いったぁ……痛いぃ!」
と頭を押さえうずくまる。
「知るかっ自業自得だ」
するとアリスは不敵な笑みを浮かべ
「私は怒ったよエミル。今日からアリスは……」
最初のコメントを投稿しよう!