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禁断の扉、開けました
「き……来てしまった」
萌華はネットで得た情報を元に『ステラマリア』があるはずの雑居ビルの前で、ガチガチに固まったまま呼吸を整える。決戦の時が目の前に迫っていた。
スマホで再度確認してエレベーターに乗り込むと5階で降りる。足元からスポットライトが天井を照らす廊下の先に、看板も何もない鉄の扉とインターホンが見える。
萌華は辺りを見渡すが、5階にはこの扉以外に何も見当たらない。ここに来て怪しさ満点の今の状況に恐怖すら覚えながらも、腹を括ってインターホンを鳴らす。
無機質な鉄の扉が開くと、中から柔和な笑顔の男性が顔を出し、ようこそおいでくださいましたと萌華を招き入れる。
相変わらず薄暗いが、中に入るとホームページに写っていたフロントが見える。
個人情報などの確認はなく、メールの画面照会だけで、午後10時から120分コースの指名スタッフはタロで予約してること確認すると、フロアの一番奥の広い部屋に案内される。
ホテルのスイートルームのような豪奢なベッドや家具に圧倒されていると、ベッドは施術後の休憩用だと説明され、その隣の施術台でマッサージを行うのだと簡単な説明を受ける。それが終わると、用意された着替えに袖を通して待つように言われる。
男性スタッフが部屋を出たのを確認すると、用意された着替えを見て愕然とする。
「こ、これはビキニと呼んで良いのかな」
布地の面積が圧倒的に少ない上下の下着とシルクのローブを見つめ、萌華は混乱しながらも着替えを始める。
胸は乳首が隠れる程度、ショーツも申し訳程度に前が隠れるTバックだ。
その上からシルクのローブを羽織ると腰紐を結えて施術台に座る。自分は今なぜこんなところでこんな格好をしているのだろう。
ドアをノックする音にビクッとすると、萌華の返事を確認して中に男性が入ってきた。
「こんばんは」
思わず息を飲む。艶っぽい甘い声で微笑むのは、萌華の想像を遥かに凌駕したイケメンだった。
プロフィールのとおり180センチ以上ありそうな長身と、写真で見たすらりとした細身の身体と長い手脚。
20代にはない男の色気が溢れる男性は、萌華の隣に座ると、さて。と笑顔を浮かべる。
「ご指名ありがとうございます。本日の施術を担当させていただくタロです」
握手を求められて、萌華は呆然としたまま手を差し出す。
「随分と身体が冷えてしまってますね」
握った手を艶かしい手つきで撫でられて、ゾワリと全身が粟立つ。
「緊張していますか?リラックスしてもらえるように、心を込めて施術させていただきますね」
タロはそう言うと萌華の背後に回り、肩に優しく手を添えてマッサージを始めた。
き、気持ち良い。萌華は程よい力加減に身体の強張りが解けていくのを感じる。
「力加減は大丈夫みたいだね」
耳元に囁くような甘い声が響いて、萌華の心拍数は一気に跳ね上がる。
肩と首筋から腕、背中へとタロのマッサージをする手が伸びる。
シルクのローブを一枚羽織った肌には、ダイレクトにその指先や掌の温度が伝わってドキドキする。
「じゃあ、ローブを脱いで寝てもらえる?」
「え!脱ぐんですか?」
ギョッとして振り返ると、タロと目が合う。艶かしい潤んだ瞳に自分が映っているのは、なんとも言えない変な気分だ。
「アロマオイルを使ってボディマッサージをしていきます。二人きりだから恥ずかしがらないで大丈夫だよ」
そう言うと、タロは背後から胸元の合わせ部分に手を忍ばせて、肩をはだけさせると、綺麗な肌だねと直接肩に触れた。
「や、あ、あの」
「そんなに緊張しないで。大丈夫だから」
タロは萌華の耳朶に触れそうな位置で静かに囁くと、腰元に手を移動させて萌華のローブを器用に脱がせる。
そのままうつ伏せに寝るように言われると、おろしていた髪をクリップでまとめ上げられ、背中をツーっと指で撫でられる。
「あっ」
萌華は聞いたこともない甘い声が自分の口から溢れて焦る。
「敏感なんだね」
タロはそう言うと、じゃあオイルを使っていくねと萌華の脚を肩幅に開く。
少しひんやりとした液体が、足の裏から足首、ふくらはぎから大腿の付根に向かって手で馴染ませるように広げられる。
萌華は最初こそ力んでいたが、マッサージをする絶妙な力加減に身を任せるように、身体の緊張をとく。
「発汗作用を促す薬剤が入っているから、少し身体が熱くなるかも知れないよ」
タロはそう言いながら、萌華の無防備な脚をやんわりと揉んでいく。
グッと台が軋む音がすると、タロが上にあがり、自分の両足で萌華の足を挟んで固定すると、膝を折らせて、手元で萌華の爪先を一本一本丁寧にマッサージする。
「足には色んなツボがあるんだよ」
そう言いながら、足の甲と足の裏を両手で挟み込み、土踏まずの辺りにグッと力を入れて拳を沈ませる。
気持ち良い。身体がほぐれていくのが分かる。萌華はその気持ちの良さに、目を閉じると、タロに身を委ねてマッサージに集中する。
両足の爪先と足裏のマッサージが終わると、タロは台から降りて、今度はふくらはぎから太腿にかけて、ゆっくりと大きな掌と指先が何度も行き来する。
無防備な臀部までその手が及ぶと、萌華は芯が疼く羞恥を覚える。
両脚の付根の際どい部分にタロの指があたり、強く指を押し当てて揉み込まれると、ジワッと中から何かが溢れ出す。
「んっ……」
萌華の声にタロは小さく笑いながら、臀部をまさぐるように強く揉む。
「気持ちいい?」
「あっ、ん。はい」
今度は背中にオイルを垂らすと、脇腹をなぞるようにゆっくりと指先を這わせて、オイルを絡めとると、背骨から外側に向けて掌をで押し流しすようにマッサージが続く。
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