Episode.1

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 どれくらいそうして揺られていただろうか。僕たちはお互いの孤児院での生活を、楽しかった記憶を、瞼の裏にその景色を見ながら聴きあった。  馬車が、突如止まった。御者が地面に降りる音がした。着いたんだ、ついに。黙って扉を見つめる。荷台の扉が開かれる。  開かれた扉の先では、それまでの暗闇と同じくらいの暗闇が、僕たちを待っていた。それから、僕たちをさらってここまで連れてきた男。  僕たちの手足を拘束していた鎖を解いた男が、乱暴に口を開く。 「おい、降りろ」  僕たちは知らず知らずのうちに、手を握りあっていた。そうして恐怖にうち震える僕たちを見た男は、怒りを露にして再び口を開く。 「おい! 早く降りろっつってんだろ!」  瞬間、僕たちを引き摺り降ろす。  そうして、少女と共に、連れていかれた場所は……────  客席が扇状になっている、ホールの様なところだった。  異様なのは、その席に座っている者が皆、仮面をつけてマントを羽織り、出来るだけ黒ずくめになっていることだった。
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