10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
どれくらいそうして揺られていただろうか。僕たちはお互いの孤児院での生活を、楽しかった記憶を、瞼の裏にその景色を見ながら聴きあった。
馬車が、突如止まった。御者が地面に降りる音がした。着いたんだ、ついに。黙って扉を見つめる。荷台の扉が開かれる。
開かれた扉の先では、それまでの暗闇と同じくらいの暗闇が、僕たちを待っていた。それから、僕たちをさらってここまで連れてきた男。
僕たちの手足を拘束していた鎖を解いた男が、乱暴に口を開く。
「おい、降りろ」
僕たちは知らず知らずのうちに、手を握りあっていた。そうして恐怖にうち震える僕たちを見た男は、怒りを露にして再び口を開く。
「おい! 早く降りろっつってんだろ!」
瞬間、僕たちを引き摺り降ろす。
そうして、少女と共に、連れていかれた場所は……────
客席が扇状になっている、ホールの様なところだった。
異様なのは、その席に座っている者が皆、仮面をつけてマントを羽織り、出来るだけ黒ずくめになっていることだった。
最初のコメントを投稿しよう!