2 裁判と性的嗜好

2/12
36人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「つまり、家事全般や、リチャード・オースティン氏不在時の簡単な警備のようなものを行うために、被告が製造されたわけですね」  ミルドレッドが事務的なロボット製造の経緯を説明し終えると、判事は椅子の上で身じろぎした。 「本法廷の論点は、被告が奉仕先であるオースティン夫妻を離婚にいたらしめるような不貞が、果たして不貞行為であったかどうかです」 「その点を討論する前に、ひとつ、専門家として明らかにしておくべき疑問があります、判事」  フィンセントが発言して、やおら、立ち上がる。優雅とも、法廷には場違いともいえる動作のあいだ、誰も声を上げなかった。 「ミスタ・オースティンは、被告とミズ・オースティンの不貞行為が離婚原因であるとして、その賠償を求めています。ということは、ミスタ・オースティンは被告を〝人間〟として……いえ、人間とまではいかないまでも、人間と同等の人権を持つ存在として認めているということでよいでしょうか?」 「は?」リチャードは思わず立ち上がる。 「ロボット会社の代表として、僕はその点を非常にセンシティブに捉えています。ロボットが物か人か。今回の裁判の判決によって今後製造するロボット全ての扱いが百八十度変わるのです。これを無視することはできません」 「何を言っている、こいつが、こいつが人間だなどと……!」 「許可のない発言は慎むように」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!