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第122話 分身とパピィコンビVS獣型ダエーワ
シノ本体はセイラを助けに行くために翼の生えたダエーワを追いかけていった。一方影分身のシノとパピィは一本角の生えた獣型ダエーワを相手しなければならない。
影分身には実体があるが一発でも攻撃を受けたら消えてしまう。分裂体とは言えダエーワは手強い。パピィだけ残してすぐに消えるわけにはいかない。
「パピィ。俺が出来るだけ中距離から攻撃を仕掛け引きつけ隙を探る。パピィも影で攻撃してくれ」
「アンッ!」
分身が作戦を告げるとパピィが任せてといわんばかりに鳴き声を上げる。まだまだ幼いパピィだが忍犬として目まぐるしい成長を遂げていた。
相棒としてこれだけ頼りになる相手もいない。
『アjファljfkァsklrジオヮjfァファlsfジャslfjlksfァjfヮ!』
ダエーワの角が光り咆哮に電撃が乗った。広範囲攻撃――分身のシノはこれ一つで消えかねない。
「大丈夫だ――」
電撃と音の衝撃で分身の土鎧が砕けた。土纏の術――土を纏い相手の攻撃から身を守る。威力が高いため今の一撃で完全に砕け散ったがそれでも一発は受け止めてくれた。
「居合忍法・土纏――」
改めて分身が土を纏う。居合忍法は印を切ること無く忍法が使える。
「グルゥ――」
唸り声を上げ獣のダエーワが分身シノを睨んだ。その時だった槍状に変化させた影がダエーワに迫りその身を捉えた。だがバチッと弾け影が消え去る。
「放電か!」
角から電撃を放つダエーワだが、どうやら全身で常に放電することで攻撃から身を守る方法をとっているようだった。
「くそ! なんて奴だ!」
分身シノが思わず悪態をついた。これでは倒すに倒せないではないかと。
「いや放電だけで攻撃は通るはず――居合忍法・抜刀烈火連弾!」
幾つもの火球がダエーワに命中する。しかし電撃によって誘爆しダエーワへのダメージはなかった。
『アァオrjホアfァl!』
再びダエーワが奇声を発し、角から電撃が扇状に放出される。
「くっ!」
「キャンッ!」
分身シノは何とか避けた。パピィはとっさに影に潜り切り抜けたようだ。
だがこのままではジリ貧だ。ダエーワが加速して一気に距離を詰めてきた。その動きは速い。
「居合忍法・抜刀鉄壁三刃燕返し!」
鉄の壁が六枚生まれダエーワの動きを阻害した。ダエーワが電撃を放つが鉄は電撃には強い。
だがダエーワはすぐに動きを変えた。壁を縫うように避け分身シノに迫る。
「居合忍法・抜刀泥沼!」
正面の地面が泥沼に変化した。これに足を取られれば動きが鈍る。
しかし――ダエーワは沼に気づき飛びかかってきた。不味い、とシノは考えるがその時パピィが回転しながら飛び込んできた。
スキル旋風爪牙だ。パピィの爪がダエーワに迫るが途中でダエーワが体を振り胴体をむけた。
パピィの爪がダエーワに迫るがパチッ! と放電し弾き飛ばされてしまう。
「キャンッ!」
「パピィ!」
分身シノが加速しパピィを受け止めた。そのまま回転し着地する。
「大丈夫かパピィ?」
「キュ~ン」
分身シノの腕の中で甘えたような声で鳴くパピィ。可愛らしいがそんなことを考えている余裕もないであろう。
だが――
「パピィ。よく見ていてくれ。居合忍法・土錬金の術」
分身シノは忍法で苦無を数本作成した。そしてそれをダエーワの頭部に向けて投げつける。
ダエーワが大きく飛び退いた。そして身構え、グルルゥ、と唸る。
「やはりだな」
「アンッ!」
パピィも何かに気がついたようだ。そしてダエーワの角めがけてシノとパピィが攻撃する。
「やはり角を嫌がってるな!」
「アンッ!」
そうダエーワは明らかに角を嫌がっていた。先ほどのパピィの攻撃も体を捻って胴体を向けた。
あれは角を狙われるのを嫌がったからだろう。
ダエーワの分体はそれぞれ弱点がはっきりしている。獣型ダエーワの弱点は防御力だと判断できた。だがそれを補うためダエーワは常に放電し攻撃を受けないようにしていた。だがそれが適用されない場所があった角である。
「このまま一気に畳み掛けるぞ」
「ワンッ!」
『ジャsjfラsファlslrァflfljlファ!』
ダエーワが雄叫びを上げる。すると全身に更に巨大な電撃がまとわられた。さっきとは違い見ているだけで電撃が迸っているのがわかる。
そして――ダエーワが加速した。速度が上がっていた。電撃を纏った効果なのだろう。
「不味いぞこれは――」
分身シノではこれを捌き切るのは難しい。パピィの足でも追いつけるスピードではない。
「……パピィ。俺が前を行き何とか足を止める。そこを狙え!」
「アンッ!」
逃げ回っていても仕方ないと分身シノは影走りの術で動きを速くさせた。それでもダエーワには劣るがある程度対応は出来る。
そう判断した。パピィはシノに対応できるよう後ろでじっと控えていた――
「居合忍法・抜刀氷床!」
シノの忍法で今度は床が氷に変わった。これで獣のダエーワの足は封じられる。リスクはあるがその間に分身シノが迫り角を直接折りに向かった。
「これで決め――」
だが接近したシノはダエーワの角に貫かれた。弱点である角で攻撃するなど思っていなかったのだろう。だがそれを逆手に取ってダエーワが角でシノに反撃した。
ダエーワは本能で気づいていた。分身シノは一撃でも当てれば消えると。そしてこいつさえ倒せば残った犬はなんとでもなると、そう思い込んでいた。
ボンッ、と分身が消えた。それと同時に後ろで控えていたパピィも消えた。だが同時にパピィはダエーワの上をとってもいた。
ダエーワは何が起きたか理解出来なかっただろう。ダエーワはわかっていなかった。影分身は影から生まれた実体のある分身だと。それはつまり分身のシノは影そのものといえた。
パピィには影潜りがある。影の中に潜り込めるスキルだ。それはつまり影分身の中にも潜り込めるということだった。一方でシノには土錬金の術があった。これがあればパピィそっくりの人形を作り出すことができた。
だからこそ分身シノが消えれば人形が消え、そして影から飛び出したパピィが残り。
「アオォォオォォオォオオオン!」
パピィが旋風爪牙で突撃しその自慢の角をへし折った。
『jhォアァlラファkjfァjフォアjhフォサjfァsjfヵwhrfhヵfkァhfァw!』
獣のダエーワが悶絶し倒れ消えていった。分身とパピィの連携で見事獣のダエーワは倒されたのだった。
残るは翼のある分体のみ――
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