第66話 サムジャ、濡れ衣を着せられる

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第66話 サムジャ、濡れ衣を着せられる

 ハデルとやってきたダミールがギルド内に騎士を引き入れた。領主に仕える騎士達なのだろうがそれが一斉に俺を囲いだす。 「おい、これ一体どうなってんだ?」 「決まってんだろう。あのサムジャが不正を働いたんだよ」 「俺は最初から怪しいと思っていたんだよ。サムジャなんてわけのわかんねぇ天職持ちがこんなに活躍できるわけねぇんだ」 「きっと何か卑怯な手でこれまでも功績をでっち上げて来たんだぜ?」  周囲の冒険者からはそんな声も聞こえてきた。ふぅ、どうやらまだまだ俺のことを認めていない冒険者は多かったようだ。  まだまだ新参者だから仕方ないかもしれないが、こんなに嫌われていたとはな。 「おやおや、君はどうやら随分と人望がないようですな」  冒険者の反応を認め、ハデルが小馬鹿にするように薄笑いを浮かべた。 「ふん。当然だろう。そしてそんな奴だからこそ、嘘偽りで功績をでっち上げ、解決してもいない事件を解決したなどと恥知らずなことを口に出来るのだろう」  それがダミールの考えか。全く酷い言いがかりもあったもんだな。しかし、この二人はどうやら意地でも俺を捕まえたいらしいな。 「私はずっと不思議に思っていた。お前の持っているその刀、どう考えてもお前程度の冒険者が手にできる代物ではない。ダミール卿、もしかしたらそれも盗品の可能性があるかと」 「ふむ。であればそれもしっかり押収し調査せんとな」  ハデルが俺の持つ数珠丸恒次を指差すと、顎を擦りダミールがニヤリを口角を吊り上げた。  ハデルの話を聞き入れたのか。しかし、妙な違和感を覚える。 「ちょっといい加減にしなさいよ! さっきから何よ勝手なことばかり言ってさ!」  ハデルとダミールが勝手なことを口にしている中、ルンの声がギルドに響く。 「止まれ! この男に近づくのは認めん!」 「な、なんですって!」  ルンの叫ぶ声が耳に届く。騎士たちが近づかせまいとしているようだ。ルンにはできれば危険な真似は避けてほしいが。 「おい、そんな不正野郎を庇う必要ないだろう?」 「そうだぜ。ギルド長の娘が犯罪者をかばったなんて知れたら問題だと思うがな」 「ちょ、あんたらまで何言ってるのよ! 大体恥ずかしくないの! 同じ仲間でしょう!」  ルンが叫ぶ。周囲からざわざわした声が聞こえてきた。 「ふん、どうやらお前は随分と人たらしなようだな。しかもギルド長の娘を丸め込むとは。道理で簡単に功績をでっち上げられる筈だ。上手いことやったものだな。もしかしてあっちの腕は一流とかか? だとしたらギルド長の娘というのも尻軽で頭の足りない女だな。ま、所詮はギルド長の娘なんて肩書きだけで冒険者になるような女だ程度がしれているというものだろう」  ダミールが下衆な勘ぐりで好き勝手言ってくれた。だが、聞き捨てならない話だ。 「その言い方はルンに対して失礼だやめてもらおうか」 「ワンワン!」 「……何?」  俺とパピィが抗議の声を上げると、ダミールが不機嫌そうに顔をしかめる。 「ルンはいち冒険者として決して親の力など借りることなく一生懸命やっている。別に俺のことで何を言われようが構わんが、ルンの尊厳を踏みにじるような発言は看過できない。訂正しろ。そしてルンに対して詫びろ」 「グルルルウゥウゥウウ!」 「は? て、訂正しろ? おまけに詫びろだと? 貴様、この私に向けて言ったのか!」 「お前以外に誰かいるか? 何だお前は自分が今言ったことも忘れたのか? 領主の代理というのはアホでも務まるものなのか?」 「……シノ」  目の前の領主が拳をプルプルと震わせ俺を睨みつけてくる。そんな目をされても全く怖くはないがな。 「えい! もういいお前らさっさとそいつをひっ捕らえろ!」 「いい加減にして下さい! ここは冒険者ギルドよ! 例え領主代理であろうと勝手な真似はゆるされないわ! ギルドは完全中立組織、そのことを貴方だって知らないわけないでしょ! そこの騎士たちもよ! うちの冒険者の周りから離れなさい!」  シエロの怒声が響き渡る。すると明らかに騎士に動揺が生じた。 「黙れ。その男は罪をおかしたのだ。領主として罪人を連行する権限がある。中立組織だろうとそれは変わらないはずだ! いいからお前たちさっさと捕まえろ! この私の命令だぞ!」 「やれやれ、これは一体何の騒ぎだ?」  ダミールが命じるも騎士は中々行動に移せない。そこへギルド長オルサの声が聞こえてきた。 「ギルド長――」    そしてシエロの声も聞こえオルサが相槌を打っている。これまでの経緯を話してくれているのだろう。 「なるほど話は大体わかった。だったらその、何だ? 代理のダメールだったか?」 「ダミールだ! 貴様、無礼だぞ!」 「全くですな。よりにもよって領主様の弟君であられるダミール卿の名前を間違うとは」 「悪いな俺も冒険者歴が長いから、礼儀は自信がないんだ。ほら、どけよ」  オルサの足音が近づいてきた。 「な、ここから先は勝手には!」 「お前らが領主お抱えの偉い騎士さんなのは知ってるが、ここは冒険者ギルドだ。その長たる俺がどけっていってんだ」 「え?」 「いいから退け! ぶっ飛ばされたいのか!」 「ヒッ――」  騎士の悲鳴が聞こえた。かと思えば俺を囲っていた騎士の一部が割れて、オルサと、そしてちゃっかりルンとシエロも俺の側にやってきてくれた。 「よぉ、シノ。しかしお前は本当厄介事に巻き込まれるな」  そしてニカッと笑って俺の肩に大きな手を置いた。何だか楽しんでそうだな。 「さて、シエロからも話があったと思うが、うちは絶対的中立組織で通っている。にも関わらずうち所属のシノを罪人扱いして随分と乱暴な真似をしてくれたようだが、どういう了見でそんな勝手な真似をしてくれているのか、代理のダメデースから聞かせてもらっちゃおうかな」 「ダミールだ貴様!」  すっかりコケにされ領主代理のダミールの顔が赤く染まった。しかし、こういう時は頼りになるものだなギルド長というのは――
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