第34話 サムジャとルンは狙われる

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第34話 サムジャとルンは狙われる

「ダン、第二層まで攻略しちゃってよかったのか?」 「へ、関係ねぇよ。ここまで来たんだ。ただ罠だけ設置して帰っても旨味がないだろう?」  問いかけてくる仲間にダンが答えた。第一層では仲間の手で罠を大量に仕掛けてきた。特に二層に続く道の途中には絶対回避出来ないほどの量であった。 「俺もかなり素材を使ったしな。その分は稼がねぇと」 「おう、トラバウドの罠であいつらは間違い無しにここまで来れないだろうからな」  ガハハ、と愉快そうにダンが笑う。サムジャなどという使い物にならない天職持ちと組んだせいで一層も攻略できなかったとあってはギルド長の娘としての面目は丸つぶれだろう。  勿論あのシノって雑魚にしてもギルド長の怒りを買い、パーティーを組み続けるのは不可能になるはず、という考えがダンにはあった。  その上で、これをきっかけにルンの相手に厳しい処置がくだされれば、他の連中も失敗を恐れてルンと組もうとはしなくなるだろう。そうなれば自分たちが手を差し出せばルンも断るわけにはいかない、とそんな自分に都合の良い考えがダンにはあったのである。 「よし、大蜥蜴を倒したぜっと」 「おう。それは肉も旨いし皮も売れるからな。よくやったぞドクドル。でも、毒は大丈夫だよな?」 「安心しろって。ちゃんと調整してるからよ」  モヒカンの男がそう答える。そしてさらに彼らの狩りと探索は続くが、そこで罠師の男が足を止めた。 「おいどうした?」 「来やがった……」 「来た? 何がだ?」 「恐らく奴らだ。俺の感知トラップが発動した――」 ◇◆◇  一層の罠は多かったが魔物は大したことがなかった。罠の対処さえできればそこまで苦労はなかったと言えるかな。 「二層に来たわね」 「あぁ――」 「グルゥ――」    そして二層に入ってすぐ、パピィが一点を注視ししながら短く畝る。 「罠かパピィ?」 「ワン!」 「またぁ?」  ルンがうんざりだという顔を見せる。気持ちはわかる。ただ、パピィは罠を微妙な面持ちで見ていた。 「今度はどんな罠なのかな?」 「ちょっと調べてみるか」  パピィの示す場所、範囲が広いな。ただ爆破トラップのような危険性はなさそうだ。俺の気配察知でも危険な罠ならなんとなくわかる。  パピィにも戸惑いが見えるが恐らく罠が非殺傷タイプだからだろう。このタイプは俺の気配察知には引っかからないから、パピィがいなかったらそもそも気づいていなかったかもしれない。  そして注意深く罠のあるところをみて一つの答えにたどりついた。 「殺傷力のない罠だな。もっといえばただ発動しただけじゃ俺達は何も気づかず進んだ可能性がある」 「え? なにそれ? そんな罠意味あるの?」 「感知系の罠なら仕掛けた連中にとっては意味がある。おそらくこの罠はこの場所を通った者がいることを仕掛けたやつに知らせる罠だ」 「そんな罠あるんだ……でも、そうなるとシノが言っていた、他にダンジョンに来てるのがいるって予想が当たっていたってことね」 「そうだな」  一層の段階で先にダンジョンに入った連中がいると予想したが、期せずしてそれが間違いではなかったことを知ることが出来たな。 「相手は他の攻略者を妨害しようとしているようだな。ある程度慎重になった方がいいかも」 「本当に迷惑よね。こっちがしっかりと手続きを踏んで攻略しているっていうのに」  ルンが憤る気持ちもわかる。ただ冒険者にはルールを守らず好き勝手振る舞うような連中も一定数いるものだ。 「それでどうするの?」 「う~ん……このまま通ってしまおう」 「え? いいの?」 「殺傷力はないからな。それに、この際、向こうには気がついてもらった方がいいだろう。ずっとコソコソされるのもうざったい」  勿論、更に罠を大量に仕掛けてくる可能性がないとは言えないが、罠師が設置する罠も無制限につかえるわけじゃない。  素材を必要としない罠もあるがそれは魔法みたいな物で魔力が減るし、そうでないなら素材が減る。  一層の時点であれだけの罠を設置したなら、恐らく余裕はもうそこまでないと思う。特にあの爆破トラップでかなり消費している筈だ。あの手のトラップは素材を用意した上で魔力の消費で設置している可能性が高い。効果が続くタイプは魔力の多くを罠として残すことになる。    だからこの二層で設置出来るトラップは一層よりも少なくなる可能性が高いと思う。    相手のレベルが相当高いならまた別だが、そういう相手ならあんな罠の使い方はしないと思うし。  だから気にせず二層の攻略に入るが、魔物の数が少ないな。何匹か出くわして倒したが一層より遭遇する確率が低い。 「先に攻略した連中が倒して回っているんだろうな」 「信じられない! そいつら絶対依頼受けずにやってるよね!」 「だろうな」    俺達はギルド長から直接許可をもらってる。あのギルド長が可愛がっている娘のルンに不利益な真似をするとは思えない。  しかし、こうなると護衛として依頼された意味もわかる気がするな。刻印術士な上ルンは地力もあるから、護衛としての出る幕なんてないと思っていたが、対人間、しかも罠を張って貶めようとする小賢しい相手なら油断はできない。  そのまま慎重に進む俺達だが、やはり罠は所々で仕掛けられていた。パピィが全て見つけてくれるから問題なかったが――罠の設置法に誘導性を感じた。 「こっちは罠で敷き詰められてるな」 「ならこっちということ?」 「ふむ――」  途中で道が二手に分かれていて片方はやたらと罠が設置されているようだった。とにかくソレ以上先に進めさせないという意思を感じる。しかも一層の時と違って、反対側に解除装置があるってわけでもない。  逆に反対側に設置されている罠の数は圧倒的に少ない。俺からすれば実にわかりやすい。 「ルンとパピィはここで待っていてくれるか? 先ず俺が様子を見てくるよ」  建前でそういった。俺は護衛だし、危険な場所に向かわせるわけにはいかない。ここまで魔物の数は少なかったしパピィも十分戦えるから多少の魔物ならなんとかなるだろう。ルンもここの魔物に負けるほど弱くはない。 「いやよ」 「え?」 「貴方、自分一人で何とかしようと思ってない? もし私がギルド長の娘ってことで気を遣ってるなら冗談じゃないわ。いい! 私は貴方とパーティーを組んでるの! だったら協力すべきでしょ?」  俺の胸部を指で突きながら騎虎の勢いで俺に意見してきた。  なるほど。見た目はあまり似てないと思ったが、こうと決めたら譲らない意思の強さ――その勇ましさはオルサと重なる物もあった。  護衛として同行している以上、本来は一緒に先に進むのは褒められた行為ではない。ただ、今回は同時にパーティーでダンジョンを攻略するという側面も併せ持っている。  だからこそオルサも護衛だからと過度に過保護である必要はないと言ったのだ。それはつまりルンの冒険者としての成長も期待しているということだろう。    それならば、ただ守っているだけではなく、一緒に先に進み、協力して問題に取り組み、その上で護衛として目を光らせるべきだろう。  ルンは幸い口先だけの冒険者でもなければ、天職におんぶにだっこといった少女でもない。  彼女とならきっとうまく対処出来るはずだ。 「わかった。なら一緒に行こう」 「うん!」 「アン! アン!」 「あぁ、勿論パピィも一緒だ」 「ワン!」  パピィも張り切ってるな。さて、それじゃあ先に進むとするか――
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