前書

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 歴史の研究は真実を見極める立場でなければならないはずである。  政治的な主張や思想!  ビジネスマンやアスリートの教育、指導に役立てる!  それは歴史の研究とは違うのではないかと思う。  言論の自由は認められているため、そうした観点で書かれた歴史的事件の「新説」「通説」の本は数多く出版され、証拠がないことを指摘されながら今日まで生き残っている例が多い。  コンビニで販売されているワンコインのムック本などに、小金稼ぎの目的で利用されている面もあるだろう。  言論の自由は認めるが、日本陸軍参謀本部が「桶狭間の戦い」を奇襲と妄想し、徳富蘇峰(とくとみそほう)のような歴史の知識も素養もない御用ジャーナリストがこの説を広めたことで、太平洋戦争の悲劇の遠因が作り出されたことは紛れもない事実である。  証拠もなにもない「研究家」「作家」「歴史ライター」「歴史ウォッチャー」によってつくりだされる歴史的事件の「新説」について、先人の記した貴重な資料を改めて紹介して考えていくことは、これからの未来をよりよいものにしていくことになると信じている。                         2020年夏 倉橋敦司
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