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ふたりの間には、三十一年と言う時間の隔たりがあった。 由美子の生まれる二年前に、ふたりは出会いあの時代をあの時間を一緒に過ごしたのだ。 結局、由美子は大悟に記憶を残さなかった。 それについて苦悶したが、それでも大悟は最後に会ったとき言ってくれた。 夢のなかで、と言う表現だったが、たしかにあのとき大悟は自分のことを思い出してくれたのだ。 由美子は、ふたりの約束した場所へと歩を進めている。 そこは、ふたりが初めて会った大悟のアパートだった。 もう、そこにその当時の建物はない。 周りの風景も変わり、当時を思い出すものは残っていなかった。 そして、アパートの変わりにマンションが建てられその一階のテナントにカフェが入っていた。 住所にも間違いはなく、手紙で指定されたカフェであることを確認し店内に入る。 すると、奥に腰掛けていた初老の男性が立ち上がり出迎えてくれた。 間違いない。 髪も白髪まじりになり、顔には皺が刻まれているがそれは大悟だった。 「お待たせしました」 そういって軽く会釈をした由美子は、向かいの席に腰掛ける。 あらためて、お互い見つめ合う。 ふたりが再び会うためには、大悟は由美子にいる時代まで時間を進めなくてはならなかった。 紅茶を注文し、それが運ばれて来てからふたりは話し始めた。
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