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大悟と最後に会ってから、半年が経った。
あれから、何通か手紙のやり取りは続いている。
電話も来るが、どうも携帯電話などでのメッセージのやり取りは苦手だと言う。
「声を聞きたいときは、電話にすればいいし急な要件も電話に限る。けど、文章となるとなんだかメッセージは気持ちが伝わらない気がするんだよなぁ」
「でも、あの当時と違って便利になったでしょ?だって、大悟原稿を書くときに、ペンダコが痛いっていつもぼやいていたじゃない」
「そう。あれは痛いんだよなぁ。書きたいけど、タコの部分が痛いし気になるし。けど、じつはいまでも原稿は手書きなんだぜ」
「えぇっ?だって、今どきあれでしょ。パソコンで原稿を送るんじゃないの?」
「担当にも勧められるんだけど、推敲するにもなんにしても、手書きのほうが修正しやすいんだよなぁ。まぁ、読むほうは面倒だろうけど」
そして、ふたりで笑い合う。
ふたりは、あの再会から思い出となり、そして不思議な出来事を体験した同士のような関係になった。
まさか、自分の時代に戻ってこんな関係が築けるなんて、と由美子は思う。
三十一年前の別れと、半年前の別れは、時間の流れの残酷さを感じるに充分過ぎる出来事だった。
それでも、こうして交錯しているのだ。
そして、それから数日後。
由美子は、美砂と再び会うことが出来た。
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