怖い話にゃ、オチがある

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怖い話にゃ、オチがある

   あれは私が女子大生の頃だ。夏の暑い夜。私は群馬にある榛名湖に友達と遊びに来ていた。ちょっとした肝試しをしようと、二人で車に乗り榛名湖までのドライブを楽しんでいたのだ。  榛名湖は、知る人ぞ知る心霊スポットだ。  でも、私も友人もそんなに霊を信じている質ではない。出たら楽しそうだね、みたいなノリで話していたとき、それは現れた。  駐車場を歩く私たちの横を、ゆっくりとトラックが過ぎていく。ブルーシートで覆われた荷台にそれはいた。  シートの隙間から顔を覗かせる。青白い少女の顔を私と友人ははっきりと見たのだ。少女は私たちに微笑みかけてきた。  瞬間、私と友人はうわーと叫び、車に戻っていた。急いで車を発進させ、近所のコンビニまでやってきたとき、私たちはさらに驚愕することになる。  そこで、思いもよらぬ話を聞いたからだ。  ただならぬ様子の私たちに店員さんは優しく声をかけてくれ、話を訊いてくれた。話を訊いた後、店員さんは気まずそうに口を開いたのだ。  何年も前に、榛名湖で無理心中があったという話を。とある男性が、親戚の子供たちをブルーシートで覆ったトラックの荷台に乗せ、トラックで湖に突っ込んだという。湖に沈んだトラックは、未だに発見されていないそうだ。  それから私は、毎年夏になると榛名湖にやって来る。  きっと、あの子は無理心中で死んだ子供の一人に違いない。少しでも彼女の心が休まればと、私は線香を焚いて、彼女が眠る榛名湖に手を合わせるのだ。 「また、あの人来てる……」  私があの人をここで見るのは、何回目だろう。榛名湖の湖畔で線香を焚きながら、彼女は湖に向かって手を合わせている。その様子を見るたびに、私は苦笑を浮かべるのだ。  何を隠そう。彼女が見た幽霊とは私なのだから。  あの日、私は母方の従兄弟のおじさんに誘われ、従兄弟たちと共に榛名湖に遊びに来ていた。おじさんは私たちをブルーシートで覆ったトラックの荷台に乗せ、榛名湖までやって来たのだ。シートの隙間から顔を覗かせていた私は、そのとき駐車場を歩いていた彼女たちを見かけたのだ。  眼が合ったので微笑むと、彼女たちは悲鳴を上げてトラックから遠ざかっていった。  本当にショックだ。よりにもよって幽霊に間違えられるなんて。  そして、彼女は私を成仏できない霊だと思い、毎年手を合わせに来る。  私はここにいるのに。  それより、湖の中に入っていったおじさんはいつになったら出て来るのだろう。私もそろそろ、おじさんのトラックに乗って家に帰りたいのだけれど。 (了)
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