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「……好きよ…『あんた』が好き…!ねぇ…私のために、頑張ってくれたの…?」
魔女の言葉に素直にうなづく彼。
「うん、頑張ったよ…!!」
「大好きなバラの香り…その…ありがとう……。でもね、あんたとこうしているときはね、もっと好きな匂いがあるの…声も…姿も…。」
「ローゼ……」
インキュバスは泣きそうになっていた。
「泣くことないわ。私が悪いのよ…あんたを傷つけたんだから…。」
魔女は自分も泣きそうのを堪えてさらに強く抱きしめた。
「あれを、聞いていたのね…?彼と話していたこと…。あんた、彼に会いに行っていた私を、こっそり何度か見ていたんでしょう?だからこんなに、そっくりに化けて…」
「ろ、ろーぜ……」
彼の声は、次第に彼女の聞き覚えのある声になっていく。
「…ごめんなさい……私のためにあんなに傷だらけに…。匂いを消すためにバラの中に入っていったから、トゲでケガをしたのね…?」
「ゴメンナサイ、ろーぜ…!!」
彼はコウモリの姿に戻り、大きな声で泣き始めた。
「コウモリ…そんなに大声で泣かないのっ…部屋の物が割れてしまうわ…。私はね、あんたを抱きしめるの、好きなのよ…魔力の為だけじゃなくて…どっちの姿だって…好き……声もね…匂いだって、慣れてるくらいだもの、落ち着くのよ…。素直にならなかった私がいけないの……あんたはこんなに思ってくれていたのに…」
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