3.わたしとライオンと謎規約

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「えっと、じゃあ……」  自分のお弁当から、ピックのついたエビのフリッターを先輩のお弁当箱に入れ、代わりに先輩がよけた人参を箸で奪いとる。 「交換てことで」 「あ、いや、でも……」  先輩がなにか言う前に、人参はわたしの口の中へと消えた。甘辛でおいしい。 「先輩のお母さん、お料理上手ですね」 「……気にならないんですか?」 「なにがですか?」 「……いえ、わからないならいいです、はい」  気になる? なにが? 先輩の耳がほんのりと赤い。それに気付き、わたしは自分がしてしまったことの大胆さに顔が熱くなる。箸で人参をよけていたということは、その箸で先輩は食べていたわけで――だからこそわたしはわざわざピックのついたフリッターを選んだわけで……。 「先輩」 「なんですか」 「そういうことは、もう少し早く言っていただくか、言わないでいてくれたら助かります……」 「え……おれのせい?」 「あっ、いや、そういうんじゃなくて……わたし、ちょっと抜けているところがあるので」 「抜けている……天然ですか?」 「……違います」 「ふ……天然の人は必ず違うって言いますね」  くすくすと先輩が笑っている。肩が揺れ、髪が風に揺れ、空気はどこまでもおだやかに凪いでいる。好きだなぁ。そう思いながら、フリッターを口に放りこんだ。  
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