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「ユウレイ部員だけど、何回かは来てるもん。わたしのほうから話しかけないと、なんにも喋ってくれないよ?」
鈴は、先輩が自分からわたしに声をかけてきたことに、なんらかの意味があると言いたいらしい。だけど思い返せば、わたしはこの半年ずっと先輩を待ち伏せていたのだ。待ち伏せるといってもただ廊下に立って、携帯をいじっているふりをしたり、ほかの誰かを待っているふりをしたりしながら、こっそり先輩を見ていただけだけど――でも、先輩からしたら毎朝同じ子がいるなって、顔を覚えても不思議はない。だから昨日、校舎の前で会った時に『いつもの子』だと思って挨拶しただけ……なんじゃないかなと思う。
「あ、そうだ! 秋華も剣道部のマネージャーになったら?」
「やだよ。それにクラブ入ってるし」
「いいじゃん。クラブと掛け持ちしたっていいんだし。秋華がマネージャーになったら、ライオン先輩も毎日来るかも!」
「やらないし、こない」
マネージャーなんてとんでもない。そりゃ、先輩の胴着姿は見てみたいけど……。
「そんなことが明日香先輩に知れたら、大変なことになるでしょ?」
鳥山明日香先輩――前に一度だけ見たことがあるけれど、髪の長い綺麗な人だった。あんな綺麗な人ですら先輩の彼女じゃないっていうのに、わたしなんかどう頑張ったって無理に決まってる。
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