2.わたしとライオンとピンク

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「なに?」 「ライオン先輩は、いつも屋上でお弁当を食べています」 「うん? そうなの?」 「そうなの? じゃなくて! だから秋華も明日から屋上に行くこと!」 「え、いい、いい。いいよ、わたしは」  それに屋上って施錠されてるんじゃなかったっけ? いじめとか飛び降りとか、そういうことに使われないように屋上の扉には鍵がかかっているはずだ。 「先輩はどうやって屋上に?」 「前に聞いたの。お弁当とか誰と食べるんですか? って。そしたら、屋上の鍵をもっているので、ひとりで食べますって」 「もっているのでって……」  まぁ、なんとなくわからない気がしないでもない。垣内先輩なら屋上の鍵くらいどうにかできそうだし、教室よりは屋上のほうが似合う気もする。だけど、わざわざひとりで食べてる先輩のじゃまをするのは……。 「昼休み! 屋上の扉の前に行くこと! いい?」  わたしの心を読んだかのように鈴が背中をばんばん叩いてくる。 「でも……じゃまにならないかな」 「じゃまそうにされたら戻ればいいじゃん。それにさぁ、なんだかんだでもう十月なんだよ? 来年になったら卒業しちゃうんだよ、あの人」 「そうだけど……」 「あーもう、じれったいな! 別にさ、告白とかしなくても思い出くらい作ったっていいじゃん。見てるだけよりは、お話もできるほうがいいでしょ?」  
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