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昼休み。
ドキドキしながら屋上へと続く階段をのぼる。今朝も先輩と挨拶を交わした。本当ならそれだけで嬉しいはずで、それだけで満足なはずだったのに、欲張りなわたしはお昼休みまで先輩の時間を奪おうとしている。
分厚い扉が目の前に立ちはだかり、逸る気持ちをおさえながらノブに手をかけてみるけど、それはほんの少しもまわらなかった。外からも鍵がかけられるとか? それとも、まだ先輩がきていないだけかな。どちらにしても期待が外れ、どうしようかとまわれ右をした時、階段をのぼってくる金色の頭が見えた。
うつむき加減にゆっくりと階段をのぼってくる。猫背ぎみのまるい背中。右手にお弁当箱。ブルーのチェック柄の包みが似合わなさすぎて、思わず吹きだしそうになる。だけど、だんだんと先輩が近付くにつれ、わたしの心臓はありえないほど早く大きく打ちはじめた。
うつむいていた先輩が気配に気付いてか、パッと顔をあげる。視界にわたしを捉え、ほんの少しだけ驚いたように瞬きをする。意外にも長いまつ毛がぱたぱたと揺れた。
「……佐渡さん。どうしたんですか?」
扉の前まできた先輩は、ポケットから鍵を取りだして慣れた様子で鍵をつっこんでいる。
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