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「あ、あのっ……先輩が、その……屋上でお弁当を食べてるって聞いて……それで、その……」
「……内緒ですよ?」
「……え?」
「鍵。勝手に合鍵を作ったんです。だから――」
人差し指をくちびるに当て「しー」と言う先輩がかわいくて、大きく頷く。
「どうぞ」
扉が開かれぶわりと風がわたしの髪をスカートを揺らす。
「わあ……初めてきました」
「まぁ……鍵がかかっていますから」
誰もいない屋上は広くて解放感に満ちている。景色を見たくてフェンスに駆け寄ろうとすると、先輩が慌てた様子で「ダメです」と窘めてきた。
「バレちゃうでしょ? ここに俺と佐渡さんがいるって」
「あ……すみません」
「いや……おれはいいですけど、佐渡さんまで怒られると困るから」
秋風に先輩の金の髪が揺れる。綺麗。ライオンなんて言われてるけど、たてがみよりは、黄金色に輝く秋の稲穂のようだ。あるいは水面に浮かぶ月。
「先輩の髪は染めてるんですか?」
「染める……というか、脱色です。はい」
「怒られないんですか?」
「怒られ……てましたけど、先生たちは諦めたみたいで……式典の時とかだけは黒く染めてこいと言われています」
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