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それから毎日、わたしと先輩は挨拶を交わし、お昼になると屋上でお弁当を食べた。そのひっそりとした交流は、時間にすればたったの三十分程度でしかないけれど、わたしの心を満たすには充分すぎるほどの時間だった。
だけど、それも長くは続かず――。
「ちょっといいかしら?」
放課後、帰り支度をしているわたしの元へと現れたのは……鳥山明日香先輩。陶器のように白い肌、艶のある長い髪は背中の真ん中くらいまでのストレートで、ぱっちりと大きな瞳は驚くくらいに綺麗だった。
見惚れている場合じゃないということはわかっていても、思わず目を見張るほどの美人だ。綺麗だし、いい匂いがする。わたしもこんな顔で生まれたかったなぁと場違いなことを思っていると、取り巻きのひとりがずいっと前にでてきた。
「あなた、規約違反よ」
「き、やく?」
「ファンクラブの禁止行為、第五条。何人たりとも明日香会長の許可なく垣内礼恩に接近してはならない」
……いや、ちょっと待って待って。どうしよう。令和のこの時代に、大昔の少女漫画にでてくるような展開。相手が真剣だから余計に笑いそうになってしまって、ぐっと奥歯を噛み締める。
「あの……それってファンクラブの規約ですよね? わたし入会していないので……」
「関係ないわ。そんなことを言っているんじゃないのよ」
「そう言われましても……」
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