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朝八時。いつものように校門をくぐると、校舎の前でなにやらゴミ拾いをしている生徒が多数いた。美化強化月間とか? いつもとは違う光景にきょろきょろしながら校舎に向かっていると、見慣れた金髪が……え、垣内先輩? なんで? 先輩って美化委員なのかな? と、新たな情報を手にいれたような気分になり、うきうきしながら先輩の横を通りすぎようとした――その時だった。
「……おはようございます」
……えっ? 声の主は垣内先輩で手にトングをもったまま、わたしをじっと凝視している。
「あ……お、おはようございます!」
ぺこりと頭をさげると、先輩は相も変わらず気だるそうな様子でトングをカシャカシャと鳴らした。
「あの……どうしたんですか? こんな早くに」
カシャカシャとトングを鳴らしながら、先輩が面倒くさそうにしゃがみこむ。
「……遅刻の罰らしいです」
遅刻の罰。なるほど。先輩は、わたしがいつも待ち伏せている廊下を授業開始前には通りすぎていくけれど、教室は三階だ。ゆっくりのぼっていたのでは、授業前に校舎に入っていたとしても、開始のチャイムに間に合わず遅刻扱いとされてしまうのだろう。
しょんぼりとしゃがみこんでいる先輩は、とてもライオンには見えない。どちらかといえば捨てられた子猫のようだ。わたしは笑いそうになるのを必死にこらえながら「お疲れさまです」と、今度こそ先輩の横を通りすぎた。
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