17人が本棚に入れています
本棚に追加
夏の始まりは、いつも
「なぁ、お前。俺の事好きなん?」
総長の突然の質問で始まる。
「......誰から聞いたんですか、それ」
「特攻隊長。"アイツ、総長の事好きらしいですよ"って言ってた」
「......微妙に似てる声真似が腹立つんですけど」
ぶち、と包帯をちぎってゴミ箱に放る。総長は壁に凭れたまま、何も言わずに俺を見ていた。
「...私情持ち込むのはチームとしてダメでしょ」
「関係ねぇだろそりゃ。好きなら好きで俺は構わねぇよ」
「.........意味わかって"それ"言ってるとしたら相当のバカですね、あんた」
わざと煽るような口調で言っても、数百人の不良をまとめる総長は眉一つ動かさない。いや違う。この人は動かす眉毛がないんだ。
「...で、どうなんだよ。ほんとの所」
「......私情持ち込みたくないって言ってんだからそういう事ですよ」
「......ひねくれた返事だなぁ、おい」
総長が呆れたように溜め息をついたが、ひねくれてない暴走族がどこにいるというのだ。
「...素直じゃねぇから、秒で別れちゃおうかなぁ~......」
「......それは嫌っす」
ぶち、と最後の包帯をちぎって、俺は赤くなった耳を隠すようにしてそっぽを向いた。
最初のコメントを投稿しよう!