夏の始まりは、いつも

1/1
前へ
/42ページ
次へ

夏の始まりは、いつも

 「なぁ、お前。俺の事好きなん?」 総長の突然の質問で始まる。  「......誰から聞いたんですか、それ」 「特攻隊長。"アイツ、総長の事好きらしいですよ"って言ってた」 「......微妙に似てる声真似が腹立つんですけど」 ぶち、と包帯をちぎってゴミ箱に放る。総長は壁に凭れたまま、何も言わずに俺を見ていた。  「...私情持ち込むのはチームとしてダメでしょ」 「関係ねぇだろそりゃ。好きなら好きで俺は構わねぇよ」 「.........意味わかって"それ"言ってるとしたら相当のバカですね、あんた」 わざと煽るような口調で言っても、数百人の不良をまとめる総長は眉一つ動かさない。いや違う。この人は動かす眉毛がないんだ。  「...で、どうなんだよ。ほんとの所」 「......私情持ち込みたくないって言ってんだからそういう事ですよ」 「......ひねくれた返事だなぁ、おい」 総長が呆れたように溜め息をついたが、ひねくれてない暴走族がどこにいるというのだ。 「...素直じゃねぇから、秒で別れちゃおうかなぁ~......」 「......それは嫌っす」 ぶち、と最後の包帯をちぎって、俺は赤くなった耳を隠すようにしてそっぽを向いた。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加