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辰巳
「ねーねーお兄さんさぁ。その髪色どーなってんの?」
「うるさい」
「ねー、その前髪邪魔じゃない?切ろうか?」
「うるさい」
日本最大の暴走族・十二支連合。このチームは干支の名を冠する12の部隊+αで構成されており、その人数は日本最大級である。
その中でも特に大人数で構成されている辰部隊と巳部隊は、隊長同士だというのに、なかなかどうして仲が悪いのである。
「ねー、お兄さんって"うるさい"しか言えないの?ねぇ病気?」
「......死んでおけ」
巳部隊隊長・縄巻巳音に纏わりつかれながら、辰部隊隊長・瀧上龍成は雑誌のページを静かにめくった。リアクションの薄さに納得がいかない縄巻は瀧上に纏わりつき、鮮やかな橙色に染められた瀧上の前髪をそっと手に取ると、指先でゆっくりと撫でた。
「えーすごーい。めっちゃ綺麗に染まってるじゃん」
「...触るな。色が落ちる」
「そんな簡単に落ちるわけないじゃん。バカなの?」
「......余程、死にたいらしいな。貴様は」
唸るように言った瀧上が雑誌を放り投げて立ち上がると、それまで纏わりついていた縄巻が"するり"と体を離した。そして割れた舌先を瀧上に見せ、「やだぁ、怒るの?」と馬鹿にするように笑った。
「短気は損気だよ?おまけに老けるし」
「お前と話していると頭が痛くなる。とっとと立ち去れ、喧しい」
笑う縄巻に、睨む瀧上......。
「...はいはい2人とも。ストップストップ」
そんな2人の間に入ったのは、参謀的ポジションの戌間だった。軽く手を叩きながら2人の間に入り、「はぁ」とため息をついた。
「モメるなら外でやってくれる?亥に見つかるとめんどくさいから」
「......戌が言うなら仕方ないな」
「亥はめんどいもんねぇ~、しゃーないなぁ」
呆れた様子で2人が外に出ていくと同時に、昼寝から起きてきたらしい寅が「ふが~っ」と欠伸をしながら歩いてきた。
「あんだぁ?どした?」
「喧嘩。亥に見つかるとうるさいから外行ってもらった」
「あ~...まぁうるせぇもんなぁ」
「よっこいしょ」と戌の横に座った寅が、首元をボリボリと掻きながら「しっかし、まぁ...」と呟いた。
「アイツら、仲良いよなぁ」
「長いもの同士、やっぱ気が合うのかね」と訳の分からない事を言う寅。戌は「バカなの?」と寅を一蹴し、外から聞こえる轟音にため息をついた。
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