華散る夜に 寅嗤う

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華散る夜に 寅嗤う

 ぎし、とベッドが軋む。 「......ん、」 うつ伏せになって通販サイトを物色しながら、後ろで動く寅の熱を感じた。性器ではない所に性器を挿入されるのは少しも気持ちよくないが、寅がこれでスッキリして誰も殺さないのならそれでいい。 (...あ、これ欲しいかも) 戌は好きでもない行為をそっちのけにして、通販サイトの物色に没頭した。  ギシギシと軋む音に混ざって、荒い息と卑猥な水音が室内に響いた。 「......。」 それでも戌は、尚も通販サイトの物色に夢中である。背中にポタポタと落ちてくる汗の感触を感じながら、もぞもぞと身じろいだ。 「ふっ......っ、」 腕に力を入れて上体を起こした瞬間、腹の奥がゾクリと震えた。思わず上擦った声を漏らすと、寅がピタリと動きを止めた。  「......気持ち良かった?」 「......別にそんなんじゃないし。いちいち聞かないで」 女のように扱われるのが嫌で、戌はつい強い口調で言い返してしまった。それでも寅は怒るでもなく悲しむわけでもなく「わりぃ」と一言だけ返して、また腰を揺すり始めた。  (......別に気持ちよく、ないし...) 「1度意識してしまったのが悪い」と反省したのは、何時間か経った時の事だった。 「ふっ、ぅあ...っ、や...っ」 「......声出てるぞ」 「うるっ、さい...っ、は...っ、ふっ!」 ゾクゾクとした快感が容赦なく体を襲う度に、頭と下半身が甘く痺れて蕩けていく。 「うっ、ふ......っ、」  噛み締めた唇から唾液が漏れ、ポタポタと垂れてシーツにシミを作る。上体を支える腕はブルブルと震え、熱い指先で洗い立てのいい匂いがするシーツを掴む。段々と感覚が失われていく浮遊感が怖くて、繋がっている部分に力を入れた。 「......今、ちょっと締まった」 「うっさい...っ、黙ってろバカ...っ!」 力を入れた瞬間に後ろが締まり、入っているものの大きさを感じながら安心した。どうやらまだ、遠くへはいかないらしい。  (この遅漏が...早く出せよバカ...っ) しかし自分の体がおかしいのは事実である。だから早く動いて、出して、終わらせて欲しい。 「うぁ......っはぁ!!??」 そんな自分の願いが届いたのか。それはそれは物凄い勢いで、寅のものが最奥を突いた。目の前にバチンッと火花が散り、思考が停止した。  「えっ、やだっ、ちょっ、ま...っ!!」 何が起きたのか理解したくて制止をかけるが、そんなものを聞き入れてくれる相手ではない。グリグリと内臓を抉られ、戌は血を吐き出しそうになった。  「はっ、はあっ......あっ!?」 息を整えている最中に腕を掴まれ、戌はうつ伏せから仰向けにひっくり返された。部屋の照明を後光のように背負った寅の顔を睨み「何すんの?」と言葉だけの抵抗をすると、寅はゆっくりと口角を上げた。 「......可愛いなぁ、と思ってさ」 「...マジで後で殺す」 掠れた脅し文句は、寅の耳に届いただろうか。満開の花のように色づいた戌の上で、寅はただ微笑んでいた。
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