適当な返事はほどほどにね。

1/1
前へ
/42ページ
次へ

適当な返事はほどほどにね。

 「疲れた」とソファに倒れたお兄さんの背中を見て、その逞しさに「へぇ~」と声を漏らした。 「お兄さん、背中すごいねぇ。筋肉ヤバない?」 「ん...」 余程、疲れているのか。オレの砕けた口調に何も言わず、お兄さんが頷いた。正直つまらないが、そんなに疲れているのなら仕方ない。 「......何をするつもりだ」 「ん?疲れが取れるマッサージ」 年上への敬意を持って、疲れが取れるようマッサージをしてあげよう。  「...この辺どう?痛い?」 「......ン、」 「そっかぁ~、じゃあこの辺?」 「.........ん」 「そっかそっかぁ~」 うつ伏せで寝るお兄さんの腰の辺りに跨って、肩甲骨周りをグイグイと押してみる。うつ伏せになっているからなのか、それとも返事がめんどくさいのか......さっきから「ん」の一言しか返してくれない。オレもオレでそれが面白くて、分かったフリをしている。  「お兄さんってさぁ、いっつもどこで鍛えてんの?トレーニングルームにいた事ないよね??」 「......ん、」 「てか何食ったらこうなんの?やっぱ肉?」 「ん......」 何を聞いても「ん」の一言である。面白くて噴き出しそうになるのを懸命に堪え、意地悪をするように脇腹を撫でた。 「ん"ん......」 「こそばゆい?」 へへ、と笑うオレに舌打ちをして、お兄さんが「真面目にやれ...」と呟いた。なんだ、普通に話せるんじゃん。  「......ねぇ、お兄さん」 「ん......」 「......やっぱいいや」 「エロい事してもいい?」と聞こうと思ったが、このままの勢いでは「ん」で済まされてしまいそうなのでやめた。 (どうせなら抵抗して欲しいしね...)
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加