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総長とのある日
「いってぇ...」
血で汚れたアスファルトに座って見上げる夜空は、何故かいつもより綺麗に見えた。
「おーおー、無茶しよるねぇ若者よ」
「...あんた、俺とタメだろうが......」
ガードレールに凭れて「くっくっく...」と肩を揺らして笑う総長の口端は大きく切れ、頬は紫色に腫れ上がっている。俺は俺で、角材で殴られた脇腹が紫色に変色し、少し体を動かすだけでミシミシと痛む。
「とりあえず帰ろうぜ?ここ虫多いし。早く寝たいし」
「そうだな......よっこい......っだぁ!!」
「、おい。大丈夫か?」
立ち上がった瞬間に感じた脇腹の痛みにフラつくと、総長が困ったように呟いた。こんな体で、バカみたいに改造して重たくなったバイクに乗れるのだろうか......。
「大丈夫......じゃない、かも」
「おいおい...。じゃあバイクどうすンだよ」
「......放置?」
「放置すンなよ......」
「言うて俺も、そんな重いの乗れないけど」と、総長が困ったように言ったが、それは熟れたトマト並みに真っ赤な嘘だ。この人のパワーはゴリラ並みである。
「...まぁ。こんな悪趣味なバイク、盗む奴もいないと思うし......今日はマジで置いてくわ......っ、」
「おー、じゃあ後ろ乗れや。家まで送ったる」
「あざぁ~っす...いででで......」
痛む脇腹を押さえながらわざと軽い口調でそう言って、俺は久し振りに総長の後ろに乗った。
「......なんてこった」
やっと街の方へ来たと思ったら、総長のバイクの燃料が尽きた。仕方ないので近くのコンビニまで押して歩き、駐車場に座りながら星空を眺める。
「そりゃこっちの台詞だわ。なんで燃料確認しないで乗るんだよ、あんたは...」
「あぁ?ここまで乗せてきてやった奴に向かって言う台詞がそれか?」
「...すんません」
あぁ、もう。どうして俺はこうも口喧嘩が弱いんだろう。上手く言いくるめられて、俺は痛む脇腹を擦った。
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