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兄弟愛
背中の傷を見る度に、心が痛む。
「、兄ちゃん。どうしたの?」
「...なんでもない」
まだ腕がうまく動かせない弟の背中を撫でて、懺悔するように背中に額をつけた。
あれは、抗争中の事だった。珍しく俺の代わりにチームを率いていた弟が、ナイフで切られて大怪我を負ったのだ。電話をかけてきた奴の叫び声は未だに耳から離れず、病院に駆けつけた時に見た弟の姿も、忘れる事が出来ない。
それを知ってか知らずか、弟は身の回りの世話をみんな俺に任せる。背中の傷を見る度に吐き出しそうになり、その背中に触れる度に後悔の念に心がグチャグチャにされる。
背中につけた額に、弟の鼓動が伝わる。「あぁ、生きてるんだ」と安心しながら「これが失われかけたんだ」と不安になり、何が正しいのか見失う。
「...なぁ、」
「ん?どしたの」
「......ごめん、」
正しいのか分からず発した言葉に「しまった」と思ったが、弟はヘラッと笑っただけだった。
「謝らないでよ、兄ちゃん。俺なら平気だから」
「ね?」と弟が首を傾げた。
俺はただただ泣きながら「バカヤロウ」と呟いた。
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