その口元が悪い

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その口元が悪い

 暑いからとコンビニに寄ってアイスを買い、ムシャムシャと食べる。口の端からアイスが垂れてベタベタするが、そんな事を気にしてる場合ではない。暑くて死にそうなのだ。 「...あちぃ、」 「温暖化じゃない?"どっかの誰かさん"がいつまでも2スト乗ってるから...」 「...その2ストの後ろに乗ってここまで来たのはどこのどいつだ??」 珍しく狗亥を論破できた......。そう思った寅卯は「ふふん」と得意気に胸を張った。 「...その"後ろに乗ってここまで来た"奴の金で買ったアイスを食べてるのは誰なんだろうね??」 「......わぁったよ。俺がわるぅござんした」 結局、今回も勝てなかった。 寅卯は「ちっ」と舌打ちをして、アイスを噛み砕いた。  アイスを食べ終えた寅卯の横で、狗亥はまだアイスを食べていた。時折「ぅ、」と呻き、眉間に皺を寄せている。 「...食うの遅くね?」 「......ちかくかびん、」 「?びんかんちくび??」 「......。」 「いてぇ!いってぇっ!蹴るなや!おい!」 「ローファーで蹴るんじゃねぇ!!」と、寅卯が叫ぶ。狗亥のローファーは鉄板でも仕込んであるのか、蹴られると物凄く痛いのだ。  「......なんでも下ネタに繋げる寅卯が悪い」 「だからって手加減しろや......いててて......」 痛がる寅卯に舌打ちで返事をして、狗亥がアイスを口に含む。男にしては艶がある厚めの唇がアイスに沈み、アイスがトロトロと溶けていく。 「.........。」 アイスを舐める真っ赤な舌先に、アイスに沈む柔らかそうな唇......寅卯は気まずさを誤魔化すように「あっちぃ...」と呟きながら、フイとそっぽを向いた。 (エロいんだよなぁ、こいつの唇...) フザけてフェラをさせようとして半殺しになった歴代の先輩や後輩たちの気持ちが、今ならよく分かる。 (...いや、分かっちゃダメだろ) 分かった事が狗亥にバレてみろ。寅卯も漏れなく半殺しだ。  「ん...、」 そんな気持ちになっている寅卯の事なんて考えず、狗亥はアイスの緩くなった所をペロリと舐めてから、チュッと吸い付く。ああもうやめろ。そういうフェラみたいな事をするな...。 自然と唇に向く視線......。自分の若さがつくづく嫌になる。なんでそういう目で狗亥を見てしまうんだ。それもこれも全部、狗亥の唇がエロいのが悪い。 「...寅卯?」 「あ"ぁ!?」 「......どしたの?目が血走ってて怖いんだけど」 「......ンでもねぇよ!このバカ!!」 「...はぁ???」 「情緒不安定かよ」と、狗亥が心底軽蔑したような目で寅卯を見た。
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