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内部抗争(仮)
「...総長。長門さんが帰ってきました」
「......おぅ、」
扉の向こうから聞こえる舎弟の声は震えており、総長の陸奥は「あぁ、」と思った。
(よっぽどだなぁ、)
カツカツと踵を鳴らして、部屋から浴室まで歩く。廊下の途中ですれ違う舎弟たちは、すがるような目で陸奥を見て、それから深く頭を下げる。「この事態をどうにか出来るのは貴方だけです」とでも言いたそうなその態度に、自然と舌打ちをしてしまう。
(なっさけねぇなァ......)
「何のためにそんなデケェ図体してんだテメェ等は」と、陸奥は情けない舎弟たちを心の中で罵倒した。
「...おい、長門。入るぞ」
風呂に入ってすぐ、血の臭いと石鹸の匂いが鼻をついた。臭いの主はだだっ広い浴槽に浸かりながら、こちらに背中を向けている。
「...長門。お前何して来た?くっせぇんだけど」
ブーツを脱いで、ズボンの裾を捲り、ゆっくり浴槽に近づく。それでも長門はこちらを向かず、浴槽に浸かったままだ。
「...おい。何シカトしてんだ?なが......」
長門の背中に触れられるぐらい近づき、ゆっくりとしゃがんだ瞬間......。
「ぉあっっっ!?」
胸ぐらを掴まれて浴槽に落とされた。
「...っはぁ!おい!何すんだよ!!」
「......あとで背中流せ」
「それを言いてぇだけなら普通に言え!」
「なんだよコイツ!」と叫んだ声が浴室に響き、浴室の外に来ていた舎弟たちが「内部抗争だ...」と声を震わせた。
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