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ほえる、ほえる。
夏休みの自由研究。読書感想文と並んで、小学生の天敵とも呼べる存在の一つである。
ごく一部の人間は早々に片付けて自由を満喫し、さらにごく一部の人間は課題そのものを楽しんでこなし、さらにある程度の割合の人間が親兄弟に代わりにやってもらうというズルをする。
でもって、残りの多くの子供は、代わりにやってくれる優しい親がいるわけでもなく、夏休みの終盤になってから慌て始めて無理やりお茶を濁すことになるわけなのだが。僕達の場合、そのお茶を濁すという方法にさえも困って頭を抱えているのが現状なのだった。
八月ももう少しで終わり。それなのに自由研究が終わっていない。まあそれは、去年も一昨年もその前の年も同じであったので、僕にとってはいつも通りではあるのだが。今年は“インターネットで調べてそれっぽいレポートを出して終わらせる”という裏技が使えないため大ピンチに陥っているのだった。
原因はただ一つ。去年のクラスで、ネット記事を参考にまるまるコピペして自由研究レポートを提出した生徒が続出し、先生の怒りを買ったからである。
「畜生、ネットのコピペがダメとか。マジどうすればいいのかわかんねえ!」
僕、やっくん、エイジ、ペコすけの四人組はうんうんと頭を付き合わせて悩むハメになっていた。全員揃って、夏休みの課題はギリギリに片付けるか片付けないかというダメ小学生のグループである。今年は同じクラスになれたのをいいことに、春先からずっと四人で遊び回る日々が続いていた。なんせ僕らは揃いも揃って公立中学に行くことを決めているし、塾なんて面倒くさいものにも通っていない。他のクラスメート達が一生懸命勉強している横で、毎日サッカーやらバスケやらドッジボールやらではしゃぎまわっていても問題ないメンバーなのだった。
まあ、そのおかげで学校の勉強はだいぶ疎かになりがちであり、今年もテストが返却されるたび四人のうちの誰か(あるいは複数)が当たり前のようにクラス最下位の点を取ってお叱りを受けるという状況が続いているわけだが。
「自由研究って、ほんとなんのためにあるんだよ。ぶっちゃけ、自分の力だけで課題をクリアして出してくる優等生が何人いるんだかって話」
「ほんとそれ」
「坂口とか、絶対親にやってもらってくるよな。あいつ写生会の絵も家に持って返ったとたん、すっごいクオリティ上げてきたじゃん。絶対、美術部のねーちゃんにやってもらったんだぜ。なんで先生気づかないで褒めてんだよ」
「いいよなー、要領良いやつ。庶民はとっても羨ましいですわー」
僕がオッサンくさく告げると、三人の友人はうんうんと頷いて同意してくれた。
先生に大いに不満はあるが、いくら僕達劣等生四人組がクレームを入れても、自由研究を免除してもらえるわけでないことは明白である。そして夏休みの課題を出さないと、最悪成績表にはCかDの評価がついてしまう。これがつくと、先生が親を呼び出して説教してくるという厄介な事態が待ち構えているのだ。非常に理不尽であるが、こればっかりはなんとしてでも避けなければならない。それこそ、携帯没収!なんてことにでもなったら笑えもしないのだ。
「仕方ない、ここは俺が最終手段を提案してやるぜ!」
僕達のリーダーであるやっくんが、大きな体と拳を振り上げて宣言した。
「ズバリ!この四人で共同制作の……自由研究をやって、提出する!個人でやらなくちゃダメだなんて、先生一言も言ってないからな!」
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