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『二人の女の子』
昔々あるところにとても仲のよい魔女の姉妹がおりました。
姉は妹をとても可愛がり、妹も姉に大変なついていました。二人が暮らす町の人たちも彼女たちを受け入れ、幸せに過ごしていました。しかし、彼女たちには一つだけ心配事がありました。それは、
妹がとてもとても、運が悪いということ。
あるところに、髪を一つにまとめて縛っている女の子がいました。女の子は他の人と比べて運がありました。
くじを引けば1回で当たりを引き、市場に行けば欲しいものがいつでも揃い、雨が降っている日に外へ出ればすぐに晴れて虹がかかり、転んでも決して怪我をするほどではありませんでした。
女の子は、幸運でした。
しかし、ずっと一人でした。女の子はずっとずっと願いました。
「私の隣に、誰か欲しいわ」
私とお揃いの、誰かが欲しい。
ある日、女の子には妹ができました。
女の子の妹は、運がありませんでした。
くじで当たりを引いたことなどなく、歩けば転んで大怪我に。外へ出ればいつでも大雨でずぶ濡れに。市場に行けば欲しいものは品切で、別の日に姉に買ってきて もらう始末。
女の子の妹は、不運でした。
しかし、彼女は不幸ではありませんでした。なぜなら、彼女には愛してくれる姉がいたからです。
妹がある程度の文字の読み書きができるようになったある年、二人は町を出て魔法の勉強ができる学校のある王都へとやって来ました。フロンティア・ガーデンと呼ばれるその都は、まさに姉妹にとって新たな庭となったのです。
二人は魔法学校へと入学しました。
そしてその日、二人は入学記念に髪留めを贈り合いました。姉にはトンボの、妹にはチョウの形の髪留めを二つずつ贈り、それぞれの髪にとまらせたのです。
一人きりの女の子だった姉は、まっすぐな髪を二つに縛りそれぞれに羽が色違いのトンボがとまります。相変わらず不運な妹は、ウェーブのかかった髪を二つに分けて三つあみにしました。もちろん、その髪には姉と同じ羽が色違いのチョウがとまります。
姉妹が学校を卒業するとき、姉の肩には大きなトンボが、妹の頭には大きなチョウがとまっていました。
どちらも、髪止めと同じように左右で羽の色が違います。
彼女たちは鏡写しのようにそっくりな姿をしてはいませんでした。ですが、互いに名前を呼ぶときの笑顔がそっくりでした。
姉は相変わらず不運な妹を守るために魔法を学びました。
妹は不運な自分が幸運な姉の負担になっていると思い、幸運になるために魔法を学びました。
二人の女の子を見たことのある人々は、皆この二人はずっと一緒にいる運命にあると疑いませんでした。もちろん、当人である姉妹も疑うことはありませんでした。
しかし、すべては変わってしまったのです。
不運である妹が、たった一人で奇跡の花畑を探しに出掛けてしまったあの日に。
女の子は、一人になってしまったのです。
その年の流転の日を前に、町から一人の小さな魔女が姿を消したようでございます。
ああ、なんて不運なこと。
彼女がこの話の主人公だというのに!
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