「知っていますわ」

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紅茶色の髪を二つに揺らしてフローリアは語る。館の庭を、彼女の大きなトンボが音もなく飛んでいた。 庭師の姿は、見えない。 私、幼い頃から魔法の素質がありましたの。でも、それ以上にあの子には素質と同時に才能がありましたわ。 魔法学校へと入学した私たちはそれはもう勉強に励みましたわ。姉である以上、あの子の前に立って道を示す必要があると思い、私は将来を見据えた勉強の仕方をしていたつもりですの。それは、二人で居続けるための将来。二人で幸せになるための魔法。 私はそう思っていましたわ。 その結果手にした私の魔法は揃いを造る魔法。私の魔法については今は言う必要ありませんわね。でもそれは、私とあの子をお揃いにするための魔法でしたわ。 フローリアは長い足を組み、テーブルに右肘をトンと乗せた。そして、手のひらに頬を乗せ頬杖をつき息をはぁっと吐き出した。 うまくはいきませんのね。 本当は私の幸運をあの子に与えて、あの子の不運を消し去りたかったのですわ。 ですが、そんなことできたのはほんの僅かな時間だけ。ずっと私がそばにいてまじないをかけ続けなければ、あの子の不運はすぐに顔を出しますの。 本当に厄介なこと。 おかげで、私とあの子は完全にはお揃いになれませんのよ? ちょっと。聞いていまして? あら? それなら何故迎えに行かないのかって? あなた、おバカさんですわね。 聞いていましたの? あの森のこと。入ったら最後、全て忘れてしまいますのよ? それに、一人になったあの子に何もしなかったわけじゃありませんわ。本当だったら、私のまじないが込められた髪止めがあの子を守るはずでしたの。 でも、その日は運悪く髪止めが外れてしまったのですわ。 それほどあの子の不運は強いものですの。 それが、生まれ持っての性質ですのよ。 フローリアは目の前のカップに口をつけ、一息置いてこう言った。 あなた、幸せのクローバーを知っていまして? 普通は三つ葉の葉っぱ。でも、中には稀に四つ葉があるという植物。四つ葉を見つけたら幸運を手にできる。幸せになれる。 私はすぐに見つけられますわ。だって、私、生まれ持っての幸運持ちですのよ。でも、あの子はすぐに見つけてしまいますの。 五つ葉や六つ葉を。 四つ葉は幸運であっても、それ以上は不運。 あの子は不運に好かれてしまっていますのね。本当に可哀想な子。 あの子の、私の妹の名前はシラツメ・フェア。 三つ葉のクローバーを見つけて欲しいと願い、クローバーの本当の名前『シロツメクサ』から取りましたわ。 そして、私の名前『エクアル』は平等なという意味。その揃いとしてあの子は『フェア』、公平なという意味の名を二つ名として得ましたわ。 『不揃いの魔女』フローリア・エクアルと『忘却の魔女』こと『忘却の森のワガママ魔女』シラツメ・フェア。 これが私たち魔女の姉妹の名前ですわ。よく覚えていてくださいまし。
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