ラッキー・ガール

「今夜の主役はだぁれ？」

素敵な話でしょう？
今、あなたの目の前にお出ししたコーヒーこそ、彼の魔女、モカ・ウィッチ様が好む飲み物なのです。そして、隣にある可愛らしい猫の形をしたパンは彼女たちの営むパン屋で売られていたものです。
どうですか？ とても深い味わいでしょう？ 甘くてもクセになる味でしょう？

それが、彼らの作り出した形なのです。

おや。どうかなさいましたか？ 席などお立ちになって。

話はこれからが本番でございますよ。

今宵の主役はどこの誰？
誰もが嫌う件の魔女。
黒猫を殺してケラケラ笑う、不運を撒き散らすワガママ小娘悲劇の魔女。
ああ！ なんて可哀想な小娘！
舞台はこことは違う別の森、忘却の森と呼ばれる今では誰も踏み入れようとしない箱庭でございます。

執事服を纏った庭師は語り出す。
主人公は不幸な少女へと移り、スポットライトが降り注ぐ。