4.下心など、ない……

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「では。お貸ししますね。次も勝手にソムリエしちゃっていいですか」 「もちろんです。すっごく楽しみです。お返しは弟に渡せばいいですよね」  そこで彼がちょっと困ったように首を傾げて、黙って真広を見下ろしている。 「よかったら。直接感想を聞きたいので、返却もこの場で待ち合わせとかいかがでしょう。今回は俺が馬鹿だから全巻持ってきてしまったけれど、お姉さんからの返却は十巻ずつ。俺がまた新しい漫画を十巻ずつ持ってくるってどうでしょう。真人の負担が減ります」  今回だけで、仲介にした弟とこれだけすれ違った。  弟と予定が合わないと借りるのも返すのも時間がかかるということになる。  真広はこの近辺に勤めているから、この場に来るのは合わせやすい。彼もシフト制の消防士だから非番の日に出てくることができるのだろう。 「そうですね。では、連絡先の交換を」 「よろしくお願いします」  互いのスマートフォンを取り出して、メッセージアプリでやりとりできる情報を交換した。 「では。これで」 「ありがとうございました」  たったそれだけ。漫画を50冊も軽々と持ってきてしまった消防士の彼が、これまた爽やかな笑顔で一礼をしてさっと去ろうとしていた。 「あの」  真広は呼び止める。彼が振り返った。
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